誰もが一度は聞いたことがあるフェルメールという名前。《牛乳を注ぐ女》は彼の代表作として有名です。ところが、彼の生涯は謎に包まれ、残された作品もわずか35点ほど…。
今回の「フェルメール展」大阪展(2019年2月16日(土)~2019年5月12日(日))では、そのうちの6点が大阪市立美術館に集結します。
2018年10月5日〜2019年2月3日に上野の森美術館で開催されていた東京展への来場者数は68万人超え!
大人気の「フェルメール展」大阪展では、日本初公開の《取り持ち女》や大阪展限定公開の《恋文》など6点が展示されます。これは約60万人を集めた大阪市立美術館での「フェルメールとその時代」展(2000年)を上回って、西日本では過去最大になります。
そんな「フェルメール展」を
フェルメールが好きな方も、
ご家族でお出かけになる方も、
デートで訪れてみる方も、
より楽しんでいただけるようなみどころ・情報をまとめていきます!
1.フェルメールとは...
2.展覧会のみどころ
3.会場限定の公式グッズ
4.混雑状況
5.チケット購入
6.気をつけること
7.展覧会情報
8.「フェルメール展」を楽しんだ後は…
1.フェルメールとは…
そもそもフェルメールってどんな人だったのでしょうか?
バロック期を代表する画家、ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer, 1632~1675)はネーデルラント連邦共和国(オランダ)の画家です。流派や師事した画家がわからない等、不明な点は多く、その生涯はまだまだ謎に包まれています。
フェルメールは、何の変哲もない日常をシンプルな構図で描き出しました。作品はどれも、奇をてらっているわけではないのになんだか不思議な印象……時が止まっているような静けさがあります。彼の描く人物は、あたかも静物であるかのように描かれたため、静物画と風俗画の融合とも言われます。
光を粒子で捉え、空間全体に淡く描いた彼は「光の魔術師」とも呼ばれています。彼は光の反射を表すために、白い点を並べてハイライトにしました。これはフェルメール独自の技法です。その淡い光が、平凡な光景をミステリアスで静かな、まるで夢の中であるかのように思わせます。
現在世界屈指の人気を誇る画家フェルメールですが、生前もそれなりの評価を受けていたにもかかわらず、実は作品数の少なさから、死後、ルーベンスやレンブラントほど知られてはいませんでした。 しかし、19世紀後半にフランスの美術評論家によって再評価され、1995〜1996年にアメリカのワシントンとオランダのデン・ハーグでフェルメール展が開催されると、再び世界的に注目を集めるようになります。日本でも2000年に大阪市立美術館で初めてフェルメール展が開かれ、一躍人気者に。
ブームになってからは現存する作品の少なさも魅力の1つとなり、フェルメールの全作品を制覇しようと目指す人も多いです。
作品数が少ないとはいえ、世俗画や風景画、静物画など幅広いジャンルにわたっているので見応えがあります!
他の芸術家に厳しいと言われたサルヴァドール・ダリ(Salvador Dali, 1904~1989)もフェルメールのことは絶賛!「アトリエで仕事をするフェルメールを10分でも観察できるなら、この右腕を切り落としてもいい」なんて言葉も残しています。
彼の描く光に注目するだけでなく、作品に描かれた人物の視線の先や頭の中を想像して、鑑賞してみてはいかがでしょう?
2.展覧会のみどころ
1)西日本過去最大規模の6作品展示
現存する作品点数が少ないことで知られるフェルメール。そんな彼の作品が6作品も集結します。
しかも初期作から始まり彼の人生の様々な年代の作品が展示される今回の展覧会は、質量ともに彼の足跡を辿るにふさわしい内容といえます。
彼の作品には度々様々なモチーフが登場しますが、共通のモチーフでフェルメールの世界を堪能出来るのも今回ならではの楽しみ方かもしれません。
例えば「手紙」。フェルメールは、「手紙」に関する作品を多数残しています。大阪展では、大阪展限定公開の《恋文》、《手紙を書く女》、《手紙を書く婦人と召使い》と3点が展示されています。比較的早く郵便制度が発達し、識字率の高かったオランダでは、新しいコミュニケーションツールとして手紙が身近な存在だったようです。
手紙を手に、意味ありげに視線を交わす女性二人が描かれた《恋文》。写真を思わせる構図が目を引くこの作品には注目したいポイントがいくつかあります。
例えば二人の背後にかけられた絵画。海運国オランダらしく、海洋画です。フェルメールの作品では楽器や地図等のモチーフが何度も描かれ、それらはしばしば寓意性を秘めています。それでは、中心の目立つ位置に配置されたこの絵は、何を意味しているのでしょうか。手紙を手にした女性の夫、ないしは恋人が海に関わる人物で、海洋画の海が穏やかであることから、彼の航海も平穏無事であるという風に読み解けるのだそうです。
また、室内装飾に目を向けると、暖炉の柱には当時の流行である、フランス、イタリア趣味が取り入れられており、ライフスタイルを知るための歴史的史料としてもみることが出来ます。
《手紙を書く女》に描かれる女性はこちらをみています。
フェルメールは「フェルメール・ブルー」とも呼ばれる印象的な青色で知られていますが、、この絵の女性が着ているガウンのように暖かい黄色も度々登場します。光が絡むデリケートなこの黄色は、光の画家フェルメールにしか描けないものです。
そんな暖かい色に包まれこちらを見る女性、なんとフェルメールの奥さんとも言われています。作品に隠されたいくつもの暗示、秘密、そんなことを知っていると、まるで物語を読むように、色んな視点でフェルメールの作品を楽しむことができます(展示作品の一つ《リュートを調弦する女》でも、調弦という言葉が、世界や家庭の調和、ハーモニーを連想させ、裏に秘められた考えを読み解く楽しさを教えてくれます)!
その他にも、大阪で初めて《マルタとマリアの家のキリスト》が公開される等、とても贅沢な展覧会となっています。
2)注目作《取り持ち女》が初来日
日本初公開ということで話題を集める《取り持ち女》。
フェルメールの作品の中で最も大きく、20代のときに依頼で描いたものです。初期作の1つで、それまで宗教画や物語画を手がけていたフェルメールが描いた初めての風俗画でもあります。
左から2番目の女性が題名にもある「取り持ち女」で、右にいる男女が娼婦とその客ということになります。…となると、不思議なのが一番左の男性。コチラをみて口元に笑みを浮かべているのは、少し不気味というか、不自然な感じがします。
このように、鑑賞者にアイコンタクトを送る人物は画家本人であることが多いといわれています。…とすると、この男性はおそらくフェルメール!
フェルメールの自画像が残っていないので比較のしようはないのですが、「フェルメールかも」と考えるととても貴重です。
当時のオランダでは、一般家庭でも家に絵画を飾っていたそうです。依頼だということは、この絵もどこかの家庭に飾られたことになります。
この絵のモチーフは先ほども紹介したように取り持ち女(文字通り娼婦と客を「取り持つ」という…)と娼婦、その客。
…奥さんや子供もいただろうに、そんな絵飾って大丈夫だったんでしょうか?
オランダはキリスト教の中でも偶像崇拝をよしとしないプロテスタント国でした。そのため宗教画の需要は少なく、歴史画や風景画、宗教を離れた世俗的な絵等が好まれました。こうした題材に比較的寛容であったことに加え、作品の主題は新約聖書に書かれる「放蕩(ほうとう)息子のたとえ話」*。聖書にかこつけるというと何ですが、聖書にインスピレーションを受けた、ということにすると品がないと言われずに飾ることができたそうです。
女性はちょうど、お客さんから金貨を受け取るところです。彼女を明るく照らす光には、この後にフェルメールが確立する独自の表現がすでに垣間見えます。現存する作品のうち3点にしか年記が残っていないフェルメールの作品ですが、《取り持ち女》の右下にはサインと制作年が記されています。
*二人兄弟の内、親元を離れ放蕩を尽くした弟が落ちぶれて帰郷すると、父親は喜び祝宴で迎えたというエピソードを通して、神のあわれみ深さを諭すたとえ話。
3)17世紀オランダ絵画の傑作が集結
フェルメールだけではなく、同時代のオランダ絵画の巨匠たちの主要作品も展示されています。フェルメールも含めると展示作品はなんと45点!17世紀はオランダが世界的な経済大国に成長し、文化面でも華やかに成熟した黄金時代。会場内を歩いていると、そんなオランダの姿が作品から透けてみえる気がします。
フランス・ハルス(Frans Hals, c.1582~1666)、ピーテル・デ・ホーホ(Pieter de Hooch, 1629~1684)、ハブリエル・メツー(Gabriel Metsu, 1629~1667)、ヤン・ステーン(Jan Steen, 1626~1679)等当時を代表する画家の作品が一堂に会しているため、どこかでみたことのある作品とも出会えるかも。オランダらしいプロテスタント教会や海の様子を描いた絵画などがずらりと並んでいます。
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4)より楽しむために
あんまりフェルメールとかオランダ絵画のこと知らないし…
ただ絵画をみるだけじゃなくてもっと知りたい!
どこをみたら良いのかわからない…!
そんな方には、イヤホンガイド(税込600円)がおすすめです。
ナビゲーターは女優の石原さとみさん!
名画の鑑賞ポイントやカンヴァスに隠されたエピソード、画家たちのトリビアを教えてくれます。
もちろんフェルメール作品だけでなく、17世紀オランダ絵画全てを味わい尽くせるような内容です!
3.会場限定の公式グッズ
展示会場を出るとグッズ売り場があります。
「牛乳を注ぐ女」ならぬ「牛乳を注ぐミッフィー」(大:3888円・小:2592円)をはじめ、かわいいグッズがたくさんあります!
その中でも私のおすすめは…
まずは、コロリアージュボトル!塗り絵ができるガラス瓶です。
気軽に彩りを楽しめて、更にかわいい!是非ゲットしていただきたい一品です。
ボトルウォーターは今展覧会のキャラクター、フェルメくんとメールさんのデザインです。飲みきった後も飾ったり使ったりできるかわいいお水です!
そのほか、フェルメール作品の缶に入ったゴンチャロフ・チョコレート、《手紙を書く女》・《牛乳を注ぐ女》の各re-wrapトートバッグ、作品内に登場する「リュート」や「手紙」をあしらった今治産の近沢レース店タオルハンカチ、大阪展限定のアンテノールのラング・ド・シャ・ショコラなどなどです!
どんなに集中しても記憶は薄れるもの。印象に残った作品について忘れたくない、もっと知りたい…というあなたには公式図録もおすすめです。出品作品すべての解説がついているだけでなく、フェルメールの全作品(真贋がまだはっきりしていない作品を含む37点!)の解説も豊富な写真とともに収められています。しかもフェルメール作品にいたってはどこに所蔵されているのかの情報まとめまで。いつかフェルメール作品をコンプリートしたいという野望をくすぐります。
他にもまだまだ様々なグッズがあるのでぜひホームページでチェックしてみてください!
4.混雑情報
人気のフェルメール展とあって混雑が予想される今回、お出かけの前に公式HPや公式Twitterをチェックしましょう!ただし、状況は刻々と変化します。時間に余裕を持って足を運びましょう。
5.チケット購入
コンビニや各プレイガイド(ローソンチケット・チケットぴあ・イープラス・セブンチケット・CNプレイガイドなど)で購入できます。
更に手数料無料でスマホ表示・自宅プリントが選べるオンラインチケットもあります!
https://www.e-tix.jp/vermeer/
6.気をつけること
現在大阪市立美術館の正面入口は「フェルメール展」にふさわしく素敵な仕様に。ただ「…この階段厳しいな」という方もいらっしゃるのでは?正面階段を迂回するスロープが大阪市立美術館正面の向かって右手に設置されています。公園内の地図で確認してみてください!
トイレは第一会場と第二会場の間にあります。が、多くはありません。混雑を避けて天王寺公園など周辺施設で事前にトイレを済ませておくと安心です。
コインロッカーは正面階段の左手側にあります。ロッカーも多くないので、駅のコインロッカーにあらかじめ預けておくのもありです。
荷物はなるべく減らして肩掛けのバッグにし、手ぶらで鑑賞できるようにしましょう!リュックは周りのお客さんの迷惑になってしまいます。
どうしても荷物が減らせない場合は、貴重品を入れられる小さめの肩掛けカバンを用意して、大きな荷物はロッカーに預けます。キャリーケースなどの大きな荷物は総合受付で預けられます。
ベビーカーは館内に指定の置き場があります。
女性はなるべくヒールの少ない楽な服装をおすすめします。足音も抑えられて周りの方への配慮も◎
さらに、作品保護のため温湿度・照度が管理されています。体調管理のしやすい服装で行きましょう。
雨の日はなるべく折り畳み傘でいきましょう。入口でもらえるビニール袋に入れて展示室内まで持ち込めるので便利です。
展示室内はすべてビデオ・写真撮影が禁止です。
また展示室内では鉛筆以外の筆記用具は使えません。メモを取りたい方は鉛筆とノートを用意しましょう。シャーペンもNGですよ!
7.展覧会情報
特別展「フェルメール展」
会 期:2019年2月16日(土)~2019年5月12日(日)
休 館:2/18(月)、2/25(月)、3/4(月)、3/11(月)、 3/18(月)
※3月19日(火)以降の会期中は無休
※災害などにより臨時で休館となる場合あり
時 間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
会 場:大阪市立美術館(〒543-0063 大阪市天王寺区茶臼山町1-82 天王寺公園内)
料 金:一般 1,800円(20名以上の団体料金1,600円)
高校生・大学生 1,500円(20名以上の団体料金1,300円)
※中学生以下無料(要証明)
※障がい者手帳等をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明)
問合せ: 06-4301-7285(大阪市総合コールセンター なにわコール)
8.「フェルメール展」を楽しんだ後は…
「フェルメール展」だけで帰ってしまうのはもったいない!2019年2月16日(土)〜3月24日(日)の期間、大阪市立美術館2階の展示室では、「啓蟄!考古遺物コレクション」、「節句を彩る-人形と漆工-」、「都市を描く-洛中洛外図と名所図会-」と、3つのコレクション展が開催中です。
2階の展示室へ向かうエレベーターは、入口を入ってすぐの左側にあります。
大阪市立美術館のコレクションには出土した土器や石器等、歴史好きにはたまらない考古遺物も多く含まれています。これらはいわば、土の中から顔を出した歴史の証言者。太古の昔に思いをはせながら、美術作品とは異なる味わいを堪能したり…
3月3日の桃の節句で飾られる雛人形をはじめ、京都を中心に製作された人形、節句にちなんだ漆工品を鑑賞したり…
京都を俯瞰して描いた「洛中洛外図」や江戸時代の国内名所を文章と挿絵で紹介する「名所図会(めいしょずかい)」でタイムトリップを楽しんだり…
17世紀オランダから一転、同じ美術館内に日本の歴史、伝統工芸、美術が展示されていて、見応え抜群です!
天王寺公園内にある大阪市立美術館。周辺施設でも「フェルメール展」との様々なタイアップが企画されています。展覧会の余韻を感じつつ、そちらに足を運んでみるのもありですね!
例えば…
2月16日(土)~4月2日(火)の期間中、あべのハルカスダイニングでは、フェルメールにちなんだメニューが登場します。
コラボメニューはあべのハルカスだけでなく天王寺ミオ内の「アフタヌーンティー・ティールーム」でも!1月29日(火)~3月4日(月)の期間、「『フェルメール展』コラボレーション アフタヌーンティーセット」が「アフターヌーンティー・ティールーム」(実施店舗:高島屋大阪店、ホワイティうめだ、京阪モール、阪急うめだ本店、天王寺ミオ、グランフロント大阪、くずはモール、千里阪急)で味わえます。
その他あべのハルカス各階に入っているカフェや喫茶店では、2月16日(土)~4月2日(火)の期間、鑑賞券(半券)提示でお得な割引や優待サービスが!
なんと「フェルメール展」半券提示の割引サービスは、近隣のアポロビル、ルシアスビル内の飲食店、あべのアポロシネマ、天王寺ミオ、あべのキューズモール、あべちかでも実施されています。
詳細は各施設の公式サイトでご確認を。
展覧会だけでなく、美味しく、お得にフェルメール尽くしの1日を締めくくるのはいかがでしょうか。
参考文献
高階秀爾監修 2011年『カラー版 西洋美術史』美術出版社
早坂優子 2006年『鑑賞のための西洋美術史入門』視覚デザイン研究所
山田五郎 2011年『知識ゼロからの西洋絵画史入門』幻冬舎
アーサー・K. ウィーロック Jr.総合監修 2018年『フェルメール展』(展覧会図録)