音楽と深く結びついたアーティストといえばワシリー・カンディンスキー(Wassily Kandinsky、Vassily Kandinsky, 1866~1944)。フォルム、色彩、線描等を通して音をカンヴァス上に再現しようとしました。
ワシリー・カンディンスキー《コンポジションX》(1939年、カンヴァスに油彩、130cm×195cm、デュッセルドルフ、ノルトライン=ヴァストファーレン美術館 [Public domain], via Wikimedia Commons)
音楽は好きですか?
「音楽はよく聞く!」「自分でも演奏する!」というように音楽が大好きな人もいれば、「普段音楽は聴かない」「あんまり興味ない…」と、様々な人がいると思います。
かくいう私は音楽が大好きです。J-POPから洋楽まで何でも聞いて、オーケストラやジャズも好きです。歌も好きなのでよくカラオケに行って歌ったりもします。
普段積極的に音楽を聴かない人でも、生活の中でたくさんの音楽に触れているはず。ゲームミュージック、テレビ番組のBGMやCMのメロディ、スーパーやコンビニの入店音や店内に流れている最新の曲など、日常を過ごす中で全く音楽を聴かないという日はあまりないのではないでしょうか。
なぜ、世の中にはこんなに音楽があふれているのでしょうか。
それは音楽が感情に影響を与えるからなのです。 今回は音楽が感情に与える影響についてご紹介していきます。
音楽が感情の動きを操作する?
みなさんはゲームセンターに行ったことはありますか?
ゲームセンターでは、ものすごい大音量でテンポの速いBGMが耳に入ってきます。また、それぞれのゲーム機からも派手にメロディが流れています。
どうしてこのように大音量で曲を流すのでしょうか?それは音楽が「快楽」を与えるためです。
カルフォルニア工科大学の教授であるジェームズ・オールズ(James Olds,1922~1976)は、1953年に、ネズミの脳の特定の部位に電気刺激を与えると餌を食べている時と同じような効果が起きることを発見しました。
この効果を司っているのが「A10神経」と呼ばれる神経です。
人間の脳には知能・感情・意欲といった三つの機能が存在します。その三つの機能を司る部位に走っているのが「A10神経」なのです。
そのため、「A10神経」が刺激されると思考がクリアになり、気持ちが興奮し、意欲も増すといった非常に研ぎ澄まされた「快楽」を得ている状態になります。
「A10神経」は音楽を聴くことでも刺激されます。
ゲームセンターでは最初はゲームが楽しさを理由にゲームに取り組み始めますが、ゲームセンターのBGMによって「A10神経」が刺激されることでさらにゲームが楽しく感じられ、夢中で遊ぶことを促進します。
逆に喫茶店やカフェなどのリラックスする場所でゲームセンターのようなアップテンポの曲が大音量で流れていることはありませんよね。
落ち着いたクラシックやジャズなどが流れている場合が多いと思います。
これらの音楽により気持ちはリラックスします。
先ほどの興奮した状態とは違いますが、これもまた快楽につながっています。
こうして気が付かないうちに音楽によって感情が操作されていることがあるのです。
音楽から生み出される感情は同じ?
京都市立芸術大学の名誉教授である大串健吾は、2006年に発表した論文「音楽と感情」(大串健吾「音楽と感情」『バイオメカニズム学会誌』vol.30、No.1、2006年) で音楽から生み出される感情についてのこれまでの研究をまとめています。
それらの研究によると同じ音楽から引き起こされる感情は、似ていることも多いものの、演奏する人や聴く人毎に呼び起こされる感情に違いが生じることがわかっています。
音楽はこころを動かす
人の「こころ」に影響する音楽。
音楽が持つそうした効果が、療法として認められるきっかけとなったのは第二次世界大戦といわれています。
身体だけではなくこころに大きなダメージをおった兵士達。病院を慰問した音楽家の演奏が彼らのケアに役立ちました。
以降、欧米を中心に音楽で心身の症状を改善、向上させる「音楽療法」が発展していきます。
直接心身の不調に作用するわけではありませんが、音楽が持つ癒し、リラクゼーション効果等はそれらの改善を促してくれます。
音楽を聴く、演奏する等々、個々の症状にあわせて音楽療法士が組むプログラムは様々。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が大事にされている今、「音楽療法」は緩和ケアの場面でも注目されています。
「音楽療法」というと身構えてしまうかもしれませんが、失恋した時、落ち込んでいる時、音楽を聴いて気分を切り替える人は多いと思います。
音楽は身近にあふれています。その効果を知って音楽を上手に使うことで「こころ」を豊かにして、生活を楽しむことができるはずです。