フェリーチェ・ベアト(1834-1909)は、19世紀半ばに中東やインド、中国などで撮影を行い、異国の風景や、インド大反乱、第二次アヘン戦争など戦場を記録する写真家として活躍しました。1863年には画家ワーグマンを頼り日本に赴き、幕末から明治にかけて、横浜を拠点に、江戸や長崎など各地で風景や風俗を撮影しています。1884年に離日しますが、ベアトが写した写真は、海外向けの輸出品として盛んになる、いわゆる「横浜写真」の嚆矢として高く評価されるとともに、150年前の光景を現代に伝えるものとして、われわれの眼に非常に魅力的に映ります。
一方、近代日本の視覚表現において、写真は重要な役割を果たしています。油彩画の技法と写真技術はともに西洋から日本に伝えられますが、洋画に取り組んだ画家たちは、場合によっては写真も参照しつつ、構図を学び、風景を見いだし、芸術性の高い油彩画をつくりあげてゆきました。
本展は、DIC川村記念美術館が所蔵する3冊のアルバムから写真約180点と、そこに見出される「人物(風俗)」と「風景」という観点において、日本における草創期の洋画作品18点をあわせて紹介するものです。西洋から日本に向けられた視線と、それを受けて日本で育まれた、芸術へと向かう視線を比較しながら、東西の文化の関わりを見つめなおす機会になればと考えています。 (プレスリリースより)
見どころ
1. 甦る150年前の日本の姿、ベアトの写真を一堂に展観
DIC川村記念美術館所蔵の3冊の写真アルバムから約180点を初めて展示します。およそ150年前に撮影された写真は保存状態が良好で、高い技術を示すベアトの写真をまとめて見ることができ、現在では失われた在りし日の日本を目の当たりにできる貴重な機会となります。
2. 日本における初期洋画もあわせて紹介
ベアトの写真に見られる「人物(風俗)」「風景」という観点から、チャールズ・ワーグマン、高橋由一、本多錦吉郎、渡辺文三郎、五姓田義松、浅井忠、小山正太郎、高橋源吉、曽山幸彦、佐久間文吾の作品18点を展示します。洋画をめざした画家たちは、写真も参考にしながら芸術的な作品を作り上げてゆきました。本展では、絵画と写真の表現の差や共通点を比べることができます。