ゲーム

イン・ア・ゲームスケープ

ARTLOGUE 編集部2018/12/11(火) - 13:29 に投稿
現代の文化としてのヴィデオ・ゲームは、文化庁メディア芸術祭においても顕彰の対象となり、現代の社会にも大きな影響力を持つものとなっています。それは、現代の社会のあり方を反映したものであり、また、これからの社会のありようを見出すことができるものと言ってもいいでしょう。 本展覧会では、現代のヴィデオ・ゲームのあり方や、それらが創り出す文化を検証することで、そこからどのようなことが読みとれるのかを、インディ・ゲーム及び、ヴィデオ・ゲーム・アートの2つの動向から捉えることを試みます。 展覧会タイトルの「ゲームスケープ(Gamescape)」とは、ゲームから見た風景・社会という造語で、ヴィデオ・ゲームがそれぞれのプレイヤー、制作者にもたらす新たな世界観を表現しています。 個人もしくは小規模チームで制作されるヴィデオ・ゲームは、インディ・ゲーム(Indie Games)と呼ばれています。「Unity」などの、個人でも入手でき、扱いやすいゲームエンジンの浸透による開発環境の発展や、「Steam」に代表されるオンラインストアなどのインフラが整備されるのに伴い、ヴィデオ・ゲーム産業のなかで一定の影響力と規模を持つものとして定着しました。制作規模の「小ささ」ゆえ、主流となったヴィデオ・ゲームの概念を覆すような新しい表現の場ともなりつつあり、アニメーション映画、コンテンポラリー・アート、電子音楽など、ヴィデオ・ゲーム以外のさまざまなコンテクストを出自とする開発者の参入も活発化しています。 また、ヴィデオ・ゲームに馴染み親しんできたアーティストが、ヴィデオ・ゲームというメディアを批評的な視座から俯瞰する、メタメディアとしてのアート表現は、「ヴィデオ・ゲーム・アート」と呼ばれ、現在の「ポスト・インターネット」状況(インターネットが日常化した社会状況のこと)も踏まえながら、メディア・アートのひとつの潮流をなしつつあります。ヴィデオ・ゲーム・アートでは、ヴィデオ・ゲームにおけるインターフェイスの操作や、ゲームが展開されている空間、またはその構造に着目することで、私たちが日常的にプレイするゲームに潜在するもうひとつの意味を考察しています。 現在では大学などの教育研究機関での文化研究としてのゲーム・スタディーズも充実化する中、ゲームに関する批評も盛り上がりを見せています。この展覧会では、ヴィデオ・ゲームというプラットフォームを用いた(ヴィデオ・ゲームというプラットフォームについての)表現を、「風景」「リアリティ」「ストーリーテリング」「自我」といったテーマに沿って集めることで、ヴィデオ・ゲームがもたらす世界観について考えることを企図しています。

マリタ・リウリア展「Golden Age」

ARTLOGUE 編集部2018/12/04(火) - 17:05 に投稿

アートとリサーチの取り合わせ、文学的思考とビジュアルアーツの結びつき、テクノロジーへの飽くなき探求心、性差への問い。マリタ・リウリア(Marita Liulia)は、美術史上にないものを創造したいという情熱のもと、唯一無二の世界観を確立し、常にフィンランド現代美術界の第一線を走ってきました。時代に即した表現を試みる彼女の作品は、メディアアート、絵画、写真、インスタレーション、ステージパフォーマンス、ショートフィルム、書籍、ゲームなど広範に及びますが「境界を超えること(Crossing Boundaries)」が全ての作品に通底し、自身の内的世界を探る多様なテーマに挑んできました。1990年代には世界に先駆けメディアアート作品を発表し国際的に評価され、2000年以降彼女の創作はより精神世界に入り込み、生きるすべや宗教観に焦点を当てています。