築地仁 「母型都市」
1960年代半ばより一貫して都市を被写体に、批評的且つ透徹した眼差しで社会と対峙してきた築地仁は、思考や感情に依る言語での表現に対抗する形で、写真という非言語メディアを用いて世界を再解釈・再構成してきました。1983年から84年にかけて「都市の変容と再生、構築と解体」を捉えるべく制作された「母型都市」のシリーズは、当時、作品制作に使用されることの殆ど無かった 4x5 インチのポラロイドフィルムで撮影され、60点を超える作品群として結実し発表されました。バブル崩壊以前のゴールデンエイジとも呼ばれる80年代に、スクラップアンドビルドが繰り返され変容し続ける都市の現場に立ちながら、築地は現実に起きる事柄を写真で探査し、作家が当時影響を受けたニュー・トポグラフィクスの視点で都市の現在を図示する試みに取り組んでいます。