20世紀初頭の中国で鉄道敷設工事中に偶然発見され、その存在が知られるようになった唐三彩。その名の通り、唐時代(618-907)に緑釉・褐釉・白釉(透明釉)という三色、あるいは、コバルトを用いた藍釉を加えた多彩な鉛釉をかけ分けて華麗な装飾をほどこした多色釉陶器である三彩は、またたく間に世界のコレクターを魅了し、今では中国陶磁を代表する存在となっています。
この時代はシルクロードを通した東西交流が盛んな時代でもありました。砂漠の貿易商人である胡人(ソグド人)や長距離交易の際の乗り物であったラクダといった異国情緒たっぷりな人物や動物、さらには西方伝来の様々なうつわ類を再現した唐三彩は、国際色溢れる当時の状況や雰囲気を私たちに教えてくれます。また、王侯貴族の葬礼を彩り、墳墓を飾り、来世で用いるために制作され、埋納された唐三彩は、当時の陶芸技術の粋をあつめた芸術品でもありました。つまリ、シルクロードの文化交流を体現した唐時代を代表する、まさに至宝と呼ぶにふさわしい作品なのです。
同展では、2009(平成21)年開催の「中国の陶俑(とうよう)」展以来10年ぶりに、出光コレクションの唐三彩を厳選し、一堂に展観されます。さらに、中国の周辺、北部草原地帯に王朝を建設した契丹(きったん)族の遼(りょう)と、西方のペルシア地方に誕生した独特の三彩(遼三彩とペルシア三彩)、および、唐の滅亡後におこった歴代の王朝(金~清時代)において、制作の伝統が守られながらも、新たに発展してきた多種多様な三彩スタイルの陶磁器も紹介されます。