草間彌生 - 近作版画を中心に-
「アート」を凌駕し、ファッションやライフスタイルなど、「文化」という巨大な枠組みにおけるアイコンとして、日々私たちに驚きとパワーを与え続ける前衛芸術家、草間彌生。
反復し増殖するドットやネット、鮮麗な南瓜や花は、永遠のテーマである「命」や「愛」を雄弁に語るとともに、「孤独」や「強迫観念」との葛藤にもがく作家の姿をも同時に映し出しています。
このたび当館では、草間彌生が手がけた初の浮世絵版画《七色の富士》、《富士は心の故郷》、《わが心の富士はかたる》を展示いたします。
伝統ある木版画技法を用い、アクリル絵画が版画として新たに生まれ変わった《七色の富士》。
山頂付近から顔を出す太陽は、私たち、あるいは世界中のあらゆる万物に対して微笑みかけているかのようです。稜線が描く豊かな裾野や、穏やかにさざめく水面、富士山の背後からあふれ出る14,685個の水玉に至るまで、一つひとつ原画に忠実に彫り起こされています。
さまざまな恐怖に抗うため、ただひたすらに芸術に精魂を注ぐ。
迷いなくこう語る草間彌生は、90歳を目前とした今、絶えず七変化しながら私たちを魅了する日本の象徴「富士山」に自らを重ね合わせ、挑まずにはいられなかったのかもしれません。