柳原義達
柳原義達―ブロンズ彫刻と原型
ブロンズ彫刻は、粘土等で形作られた作品を石膏や樹脂などに置き換え、それを「原型」として鋳型を製作、熱した銅合金を流し込み鋳造したものです。粘土自体は加工がしやすい反面、変形しやすく長期保管が困難なこと、鋳造の直接の型としては使用できないことから、原型の製作段階で消滅するのが一般的です。
三重県立美術館は、2002年、彫刻家・柳原義達氏から72点のブロンズ作品の寄贈を受け、その後、主要な作品の原型もあわせてご遺族よりご寄贈いただきました。
ブロンズ鋳造の過程においては、職人の高い技能だけでなく、仕上げの着色にいたるまで彫刻家本人による確認作業が重要です。そのため、当館は現在保管している原型を、柳原氏が亡くなられて以降、新たな鋳造が行われないよう管理してまいりました。しかしながら原型は、柳原氏が直接修正を加えたものであり、ブロンズ作品にはない魅力があることから、展示可能な状態へと修復する作業を4か年かけておこない、昨年無事終えることができました。
今回はその記念の展覧会となりますが、ブロンズ作品と原型がまとまったかたちで多く展示されるだけでなく、初展示の作品《天女のマケット》や《風見の鶏》なども含めてご紹介いたします。
視覚芸術百態:19 のテーマによる196 の作品
あらゆる領域において情報が氾濫し、グローバル化と多様化が進む今日では、美術館における収蔵品の展示方法も、時代別・地域別という正統な方法が充分には機能しなくなってきています。実際のところ、欧米の現代美術館にはテーマ別で常設展を実施するところも出てきています。この展覧会は、当館のコレクションを19 のテーマに分けて紹介します。テーマとして選んだのは、いま改めて考えてみる意義が感じられるトピックで、それらは「作品の要素」と「描写の対象」に大別できます。展示作品は、テーマを象徴する典型的作品から意外に思えるような作品まで様々です。新収蔵品も約50 点含まれています。時代・地域・ジャンルなどの基本的な美術の枠組みを大前提に選んでいますが、多種多様な作品間のつながりが感じとれる組み合わせになっています。この特別な所蔵作品展は、各自が持つ美術についての知識を再確認するにとどまらず、新たな発見があり、美術を見つめ直すきっかけにもなるに違いありません。
本展のみどころ
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