南条嘉毅

瀬戸内国際芸術祭 2019

ARTLOGUE 編集部2019/03/03(日) - 22:41 に投稿

テーマ:海の復権 

「島のおじいさんおばあさんの笑顔を見たい。」-そのためには、人が訪れる“観光”が島の人々の“感幸“でなければならず、この芸術祭が島の将来の展望につながって欲しい。このことが、当初から掲げてきた目的=『海の復権』です。 

有史以来、日本列島のコブクロであった瀬戸内海。この海を舞台に灘波津からの近畿中央文化ができたこと、源平、室町、戦国時代へとつながる資源の争奪の場であったこと、北前船の母港として列島全体を活性化したこと、朝鮮通信使による大切な大陸文化の継続した蓄積の通路であったことは、その豊かさを物語るものでした。しかしこの静かで豊かな交流の海は近代以降、政治的には隔離され、分断され、工業開発や海砂利採取等による海のやせ細りなど地球環境上の衰退をも余儀なくされました。そして世界のグローバル化・効率化・均質化の流れが島の固有性を少しずつなくしていく中で、島々の人口は減少し、高齢化が進み、地域の活力を低下させてきたのです。 

私たちは、美しい自然と人間が交錯し交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内海が地球上のすべての地域の『希望の海』となることを目指し、瀬戸内国際芸術祭を開催しています。 

奥能登国際芸術祭2017

ARTLOGUE 編集部2017/10/01(日) - 23:22 に投稿

芸術祭開催によせて

総合ディレクター 北川フラム

 

奥能登・珠洲は、能登半島の先端に位置し、周囲を日本海に囲まれた農山漁村です。黒潮(暖流)、親潮(寒流)がぶつかり、大陸からの季節風が海の水蒸気を含んで雨を降らし、外浦(北側)と内浦(南側)を有する独特の地勢も重なって、東西の植生が共存する豊かな植物・生物相につながっています。遣唐使、渤海使、北前船など、かつて日本海を舞台とした海上交易が盛んだったころ、さまざまな船が立ち寄り栄えましたが、海運から陸運に交通体系が変わったことで半島の先端という立地が弱点となり、過疎化が進行してきました。1954年に市制が施行した当時38,000人の人口は、現在では15,000人となっています。

珠洲は今までの価値観では日本列島のさいはての土地です。しかし日本各地の生活文化が集積し、そのあらわれである祭りはキリコ、曳山やヨバレの風習として今も残る日本文化の源流が湧き出ずる場所でもあります。それは今の時代、逆に希望のありかとしての特異点になるものです。