イヴ・サンローランの天才的クリエイティビティに触れられる「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」

遠藤 友香2023/11/24(金) - 06:29 に投稿
オフィスでのイヴ・サンローラン、パリのマルソー大通り5番地のスタジオにて、1986年 © Droits réservés
イヴ・サンローラン
初来日時のイヴ・サンローラン、1963年4月 © Droits réservés
カクテル・ドレス―ピート・モンドリアンへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション © Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger
カクテル・ドレス―ピート・モンドリアンへのオマージュ 1965年秋冬オートクチュールコレクション © Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger

「 モードの帝王」没後日本で初の大回顧展開催!

国立新美術館にて2023年12月11日まで開催中の展覧会「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」は、イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を得て、没後日本で初めて開催される大回顧展です。

イヴ・サンローランはクリスチャン・ディオールの急死をうけ、1958年にディオールのデザイナーとして鮮烈なデビューを飾ります。1962年からは自身のブランド「イヴ・サンローラン」を発表。それ以来、2002年の引退まで約半世紀にわたって世界のファッションシーンをリードし、サファリ・ルックやパンツスーツ、ピーコート、トレンチコートといったアイテムを定着させるなど、女性たちのワードローブに変革をもたらしました。

わずか21歳で衝撃的なデビューを果たしてから、自身のブランドとして初のコレクションを成功させ、美術作品や舞台芸術、そして日本にも影響を受けながら独自のスタイルを確立するまでの40年にわたる歴史を、ルック110体の他、アクセサリー、ドローイング、写真を含む262点によって、12章構成で余すところなく紹介しています。20世紀後半における偉大な才能であるイヴ・サンローランから生み出される、唯一無二でありながら、豪華絢爛な美の世界を間近で堪能できる大変貴重な機会となります。

次に、展覧会の見どころをご紹介しましょう。

1.日本初公開のドレスなど262点を一挙公開!

イヴ・サンローラン
イヴ・サンローラン、アンヌ=マリー・ムニョス、ピエール・ベルジェ、パリのマルソー大通り5番地のスタジオにて、1977年 © Guy Marineau

1958年のディオールでの衝撃的なデビューから、引退する2002年まで40数年余りの間に発表された作品の変遷を網羅したオートクチュールのルック110体の他、ドローイング、写真、映像など貴重な資料を一堂に集めて紹介することで、イヴ・サンローランのデザイナーとしての人生とその創造の全貌に迫ります。

2.現代にまで続く女性の普遍的なスタイル

イヴニング・アンサンブル 1984年秋冬オートクチュールコレクション
イヴニング・アンサンブル 1984年秋冬オートクチュールコレクション © Yves Saint Laurent © Nicolas Mathéus

イヴ・サンローランは1960年代において男性のものという認識がまだ根強かったパンツスタイルを積極的に取り入れるなど、衣服が持つジェンダーのイメージを超越してデザインすることで、時代が求める新たな女性らしさ、エレガンスを生み出しました。

1966年にはプレタポルテ(既製服)へ参入したこともあり、サンローランが提案したスタイルは急速に広まりました。サンローランはピーコート、パンツスーツ、トレンチコート、タキシードなど、先駆的に紳士服を女性向けに改良したことで注目されるようになります。現代では女性のワードローブとしてすでに定着しているサンローランの普遍的なスタイルをピックアップします。

3.芸術作品から着想を得たスタイルの確立

イヴ・サンローランはモンドリアン・ルックに代表されるような美術作品とファッションの融合を提案することで、伝統的なオートクチュールモードの世界に新風を吹き込んだ他、演劇、バレエといった舞台芸術や映画の衣装制作など様々な芸術分野との協働に積極的に取り組みました。

芸術作品とオートクチュールにつながりを作ることによって、ファッションは絵画や彫刻、建築といった芸術分野と同様に価値あるものだとし、作品から受けたインスピレーションを身体が土台となる生き生きとしたファッションへと結実させていったのです。

次に、Chapter 0からChapter 11といった全12章で構成される本展のおすすめChapterを7つご紹介します。

1.Chapter 0 ある才能の誕生

「品行方正」シャツ・ドレス イヴ・サンローランによるクリスチャン・ディオールの1958年春夏「トラペーズ・ライン」オートクチュールコレクション 
「品行方正」シャツ・ドレス イヴ・サンローランによるクリスチャン・ディオールの1958年春夏「トラペーズ・ライン」オートクチュールコレクション © Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger

幼い頃、家で絵を描くことが好きだったイヴ・サンローランは、絵本の装丁や挿絵を手掛けた後、ファッションに情熱を傾けるようになりました。

1953年、17歳でパリに渡り、コンクールのドレス部門で入賞したことをきっかけに、クリスチャン・ディオールのアシスタントに抜擢されます。1957年にクリスチャン・ディオールが急逝した後、21歳の若さでディオールのチーフデザイナーを務めることとなりました。1958年にはディオールで最初のコレクション「トラペーズ・ライン」を発表し、後継者として熱狂的に迎え入れられます。

2.Chapter 1  1962年 初となるオートクチュールコレクション 

Chapter 1の様子
Chapter 1の様子

ディオールで6つものコレクションを手掛け、デザイナーとして成功を収めた後、1961年にピエール・ベルジェらと共にオートクチュールメゾン「イヴ・サンローラン」を設立。翌年に発表された初のコレクションでは、船乗りの作業着に着想を得たピーコートなどを発表し、大きな注目と賞賛を浴びました。

3.Chapter 2 イヴ・サンローランのスタイル アイコニックな作品

ファースト・サファリ・ジャケット 1968年春夏オートクチュールコレクション 
ファースト・サファリ・ジャケット 1968年春夏オートクチュールコレクション © Yves Saint Laurent © Sophie Carre

イヴ・サンローランの代名詞的存在となったデザインの中でも特に革新的だったのは、紳士服からヒントを得て作られたタキシードやジャンプスーツ、サファリ・ルック、トレンチコートなどです。彼は、紳士服のカットの美しさ、快適さ、実用的な側面を維持しつつ、シンプルさとエレガンスを組み合わせた女性のシルエットを生み出しました。

これらの作品の発表は女性解放運動が興隆した時期と重なっていたこともあり、時代の空気と呼応したスタイルは、人気を不動のものにしました。その他 、ネイビールックなど女性らしくアレンジが施された服装も手掛けました。

4.Chapter 8 舞台芸術─テキスタイル

セヴリーヌ・セリジーのドレス 1967年に公開されたルイス・ブニュエル監督の映画『昼顔』のカトリーヌ・ドヌーヴのためのデザイン 
セヴリーヌ・セリジーのドレス 1967年に公開されたルイス・ブニュエル監督の映画『昼顔』のカトリーヌ・ドヌーヴのためのデザイン © Yves Saint Laurent © Sophie Carre

イヴ・サンローランは、オランで過ごした少年時代から演劇や舞台に夢中になりました。カトリーヌ・ドヌーヴ主演の映画『昼顔』やジャン・コクトーの演劇『双頭の鷲』、ローラン・プティが芸術監督を務めたミュージックホールなど、生涯を通して様々な演劇や映画の衣装を手掛けています。

5.Chapter 9 ア ーティストへのオマージュ

9章
Chapter 9の様子

イヴ・サンローランは画家や作家など多くのアーティストたちと交流し、彼らの才能へ敬意を払った作品を多く発表しました。特にピカソ、マティス、ブラック、ファン・ゴッホ、ボナールといった過去の画家への強い尊敬と親愛の念は、作品の中でも表現されました。

美術作品とファッションの融合は、伝統的なオートクチュールの世界に新風を吹き込んだのです。このChapter 9のみ、写真撮影可能です。

6.Chapter 10 花嫁たち

「バブーシュカ」ウエディング・ガウン 1965年秋冬オートクチュールコレクション 
「バブーシュカ」ウエディング・ガウン 1965年秋冬オートクチュールコレクション © Yves Saint Laurent © Alexandre Guirkinger

オートクチュールのファッションショーに欠かせないのが、フィナーレを飾るウエディングドレスです。イヴ・サンローランは、19世紀の終わりから続く伝統的なガウンの形式と、新しい女性像として斬新なデザインの両方を展開しました。

7.Chapter 11 イヴ・サンローランと日本

初来日時のイヴ・サンローラン、1963年4月
初来日時のイヴ・サンローラン、1963年4月 © Droits réservés

1963年の来日をきっかけに、イヴ・サンローランは日本の文化や伝統工芸品に魅せられ、その後の創造にも多くの示唆を与えました。一方、彼が発信するスタイルは、日本のファッションやデザインの世界にも様々な影響を及ぼすものでもありました。本章では、イヴ・サンローランと日本の関係を、資料を通して紐解きます。

 

以上、国立新美術館にて開催中の展覧会「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」をご紹介しました。本物のクリエイティビティに触れられるまたとない機会なので、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

© Musée Yves Saint Laurent Paris

■「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」

会期:2023年9月20日(水)~12月11日(月)※毎週火曜日休館

開館時間:10:00~18:00

※毎週金・土曜日は20:00まで
※11月26日(日)、12月3日(日)、12月10日(日)は20:00まで
※会期末の土・日曜日は非常に混雑することが予想されますので、平日のご来館をおすすめします。
※入場は閉館の30分前まで

会場:国立新美術館 企画展示室1E
東京都港区六本木7-22-2

お問い合わせ:展覧会公式サイト イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル (ysl2023.jp)もしくは 050-5541-8600(ハローダイヤル)

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