2010年から3年ごとに開催され、今回で5回目を迎える「あいち」の国際芸術祭。国内最大規模の芸術祭の一つと数えられる本芸術祭は、愛知芸術文化センターほか、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)を会場に、いよいよ2022年7月30日に開幕します。
3月30日に記者会見が開かれ、参加アーティスト及びプログラム全容が発表されました。参加アーティストとして、現代美術展5組と、パフォーミングアーツ11組、ラーニング・プログラム7組が新たに発表され、すでに発表済みの77組と合わせて、32の国と地域から全100組が参加します。
参加アーティストの日本人の比率は、出身地では41%、作家の活動地域では33%で、男女比は男性44組、女性35組、コレクティブ3組となっています。出展作品全体の約60%が本芸術祭のための新作となる予定です。
まずは、新たに発表されたアーティストから、美術家の奈良美智が参加する縄(愛知県芸チーム initiated by 奈良美智)に注目。
参加アーティストのひとりである奈良が発した「三英傑」という言葉と、国際芸術祭「あいち2022」のテーマ「STILL ALIVE」に応答して、奈良の母校である愛知県立芸術大学にゆかりのある若手アーティストや学生たちによって結成されたコレクティブです。異なる感覚をもつ各々の若手たちが、これらの言葉から飛躍してアイデアを模索し、お互いの表現を組み合わせ、その実現を試みます。こうした互いの表現を縄の様により合わせることで、「現在」と「三英傑」とを結びつけていきます。
その他、生と死という人間の根源的な問題に向き合い、「生きることとは何か」、「存在とは何か」を探求し続ける塩田千春や、2011年、東日本大震災直後の福島からTwitterで連作詩「詩の礫」を発表した詩人の和合亮一、映像によって映像の構造を再考させる自己言及的な方法論を用いながら、他者とのコミュニケーションの複層性を扱う百瀬文、福祉施設で生活しながら作陶を続けている小寺良和、前衛芸術シーンにて精力的に活動した岸本清子、主宰する「アイムヒア プロジェクト」によって、孤立・孤独の立場にある人々の声やその事情について模索する、ひきこもりの経験を持つ渡辺篤など、多彩な顔ぶれが揃っています。
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また、現代美術展の追加アーティストの他、パフォーミングアーツについても発表されました。演劇・ダンス・音楽といった従来の舞台芸術に加え、主として現代美術の文脈で語られてきたパフォーマンス・アートにも注目するといいます。とりわけ1960年代以降に花開いたパフォーマンス・アートが、既存の表現形式やジャンルを乗り越える芸術的探究から誕生した歴史へのオマージュとして、領域横断性と実験に富んだプログラムを展開するとのこと。
国内からは、パフォーマーであり、作曲家、音響詩人、楽器製作者、視覚芸術家の足立智美は、発表済の現代美術展への参加の他、パフォーミングアーツへの参加を新たに発表しました。
海外からは、ビジュアルアーツと親和性の高い作曲家であるスティーヴ・ライヒや、映像インスタレーションやパフォーマンスなどのアート作品も手掛ける映画監督のアピチャッポン・ウィーラセタクン、振付家、ダンサー、研究者として、世界の複数の都市を拠点に活動するトラジャル・ハレルなどが参加する予定です。会場は、愛知県芸術劇場及び愛知芸術文化センター周辺で展開。スティーヴ・ライヒの公演は、名古屋市芸術創造センターにて上演されます(スティーヴ・ライヒ氏はプログラム監修として参加。本人の来日はありません)。
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ウィーラセタクンは、今回日本のクリエーターたちとの国際共同制作のもと、初のVRパフォーマンスの制作に着手。作曲家・坂本龍一が音楽を担当します。「今回、あいち2022にてVRというお話をいただき、わからなさを探求できる機会をいただいて、嬉しく思っている。VRチームの皆さんと話し合うたび、新しい問題に直面したが、何事にも純粋さを持って取り組んでいる。芸術とは何か、人間とは何かといった不確かさにチームで取り組む機会を得られて感謝している」と述べました。
最後に、ラーニング・プログラムに関してご紹介します。ラーニング・プログラムは、「アートは一部の愛好家のためのものではなく、すべての人がそれぞれのやり方で楽しみ享受するもの」という基本的な考え方に基づいています。リサーチ、レクチャー、ガイドツアー、スクール・プログラム、そしてボランティア・プログラムといった5つの柱から構成され、例えばレクチャーは、芸術祭や愛知、美術や舞台芸術を、歴史的かつ批評的に捉えることで、多角的な視点から「芸術祭」にアプローチするものです。2021年から始まったこのシリーズは、アーカイブを公式Webサイト(国際芸術祭「あいち2022」 )で公開しています。芸術祭開幕後は、アーティストやキュレーター、キュレトリアル・アドバイザーによるトークやディスカッションも予定しています。また、ガイドツアーは、来場者が様々な形で作品と出会う機会を作るもの。作品解説や対話型鑑賞を通じて、作品の見方や理解、鑑賞体験を広げ、深めていきます。キュレーターやボランティアなどが、日本語以外の言語や視聴覚に障害のある方々なども含め、多様なニーズに合わせて「芸術祭」をガイドします。
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森美術館館長であり、国際美術館会議(CIMAM)会長も務める片岡真実芸術監督は、「生きることとは何か、命とは何かといった根源的な問いは、これまでも芸術では考えられてきたが、コロナ禍で一般の方々も考える機会が増えた。政治的な緊張関係にある今、人道的なことや、命の重さについて思いを巡らすことになった。『あいち2022』のテーマ『STILL ALIVE』と重なり、より深く考えなければならない」と語っています。
いよいよ7月30日から10月10日まで国際芸術祭「あいち2022」が開催されます。会期中、記名本人に限り、各会場を何回でも鑑賞できるフリーパスも用意。
大林剛郎組織委員会会長は「フリーパスはお求めやすい価格。アートを楽しみながら、地域の魅力といった愛知についても触れて欲しい」と述べています。ぜひ本芸術祭に足を運んで、色々と思考してみてはいかがでしょうか?
■国際芸術祭「あいち2022」
会期:2022年7月30日(土)―10月10日(月・祝)[73日間]
会場:愛知芸術文化センター/一宮市/常滑市/有松地区(名古屋市)
チケット:
【フリーパス】
記名本人に限り、各会場を何回でもご覧いただけます。
一般:前売券 2,500円/会期中販売券 3,000円
学生(高校生以上):前売券 1,700円/会期中販売券 2,000円
【1DAYパス】
入場当日に限り、各会場を何回でもご覧いただけます。
一般:前売券 1,500円/会期中販売券 1,800円
学生(高校生以上):前売券 1,000円/会期中販売券 1,200円
・中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料です。
・学生区分適用の場合、チケット確認時に学生証の提示が必要です。
・学校向け団体鑑賞プログラムで来場する場合、学生及び引率者は無料です。(要事前申込)
・パフォーミングアーツについては、別途チケットが必要です。