戦後の日本美術に革新的なムーブメントを巻き起こし、「GUTAI」として国際的にも高い評価を得ている、「具体美術協会」(以下「具体」、1954~1972)。世界有数の具体コレクションを誇る兵庫県立美術館で、「開館50周年 今こそGUTAI 県美(ケンビ)の具体コレクション」が開催されている。2月7日まで。
「具体」は、終戦後の日本がようやく落ち着きを取り戻しつつあった1954年、関西の抽象美術の先駆者・吉原治良と若い美術家たちによって兵庫県芦屋市で発足。「人の真似をするな」を合言葉に、リーダーである吉原のもと、それぞれのメンバーが旺盛な創作活動を続けた。「今こそGUTAI」というタイトルには、戦後の復興期に立ちあがった具体の迫力や熱量を、コロナ禍の逆境にある今こそ届けたいという思いが込められている。
2004年の「具体」回顧展以来となる今回の展覧会は、新奇な手法や派手なアクションといった「具体」のイメージにとどまらない、31人の多様な「具体」を感じられる構成になっている。特に味わい深いのが、女性作家の作品の数々だろう。兵庫県美の「具体」コレクションの特徴として女性作家の作品が多いことがあげられ、今回の展示では女性作家の作品が半数近くを占めている。
「具体の最初期から在籍した山崎つる子、白髪富士子、田中敦子の作品については当館が所蔵するすべての作品を出しています。3人に共通するのは反射や光沢のある新素材への鋭い感覚。壮大な世界観にそれぞれの独自性を見ることができます」と、学芸員の鈴木慈子さん。
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吉原治良の市民講座に参加したのがきっかけで吉原から絵画の指導を受け始めたという山崎つる子は、立体作品やカラフルな絵画作品などを発表。白髪富士子は白髪一雄と結婚後、制作を始めたが、火が燃えるような白髪一雄の作品に対して氷が張るようなクールな作品が印象的だ。電球が点滅する「電気服」で知られる田中敦子は、配線図のような円や線のつらなりが独特の生命感を放つ作品をいくつも描いている。田中は電気服も平面の作品も同じ「絵画」として発想していたという。女性作家がまだ少なかった時代に、「具体」のメンバーは男女関係なく互いに批評し合い切磋琢磨しながら自らのオリジナリティを花咲かせた。
同館が所蔵する山村コレクションの「具体」作品も見逃せない。西宮市の企業家で美術コレクターの山村德太郎氏がヨーロッパに渡っていた「具体」作品を買い戻し、1980年代に集中的に集めたもので、重要な作品がいくつも含まれている。同時期、兵庫県立美術館の前身である兵庫県立近代美術館でも「具体」の収集が活発化していた。今回は80年代に収集されたコレクションの中から、ニューヨークにあったマーサ・ジャクソン画廊旧蔵の元永定正の作品をはじめ、白髪一雄や嶋本昭三、村上三郎らの大作が並ぶ。これぞ「具体」といったインパクト。発表された当時の熱気が伝わってくる。
県美の「具体」コレクションは成長を続け、前回の「具体回顧展」の開催後、グループ後期の作家たちの作品が数多くコレクションに加わった。「一口に具体といっても、吉原の逝去を受けてグループが解散するまでの18年間にはメンバーの入れ替わりや様々な展開がありました。こんな作家もいたのか、そんな表現があったのかと見ていただくことで、具体というグループの多角的な理解につながればと思います」と、鈴木さんは話す。
開催概要
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特別展「開館50周年 今こそGUTAI 県美(ケンビ)の具体コレクション」
会 期:2020年12月5日(土)~2021年2月7日(日)
会 場:兵庫県立美術館
休 館:月曜日
時 間:10:00~18:00
*入場は閉館30分前まで
料 金:一般 1,300 円、大学生900円、高校生以下無料、70歳以上650円、障がいのある方(一般)300円、障がいのある方(大学生)200円
*観覧予約優先制