マンガ家として『サイボーグ009』『仮面ライダー』『佐武と市捕物控』など数々のヒット作で知られる石ノ森章太郎(1938-1998)は、エンターテインメント作品を量産する一方で実験的作品『章太郎のファンタジーワールド ジュン』や『マンガ日本経済入門』など画期的なテーマにもチャレンジし続け、万物を表現できるメディアとしての<萬画>を提唱しました。また、後進育成のための、マンガ入門書やエッセイ刊行の他、晩年は郷里貢献活動として、「マンガを活かした街づくり」に尽力するなど、教育者や作家、社会企業家(社会変革の担い手)としての側面も併せ持ちます。 石ノ森の<萬画宣言>は当初、「カルチャーに依存した、サブカルチャーとしての漫画」からの脱却でした。漫画は、コマ絵と呼ばれる1枚のスケッチから、手塚治虫らの活動を経て、絵画や映画と同じ芸術の一分野となりました。そして石ノ森は、手塚の歩んだ道を引き継ぎ、マンガをあらゆる事象<森羅萬象>を表現できるマルチメディアとしての<萬画>へと進化させたのです。彼の遺業の総体を振り返る時、<萬画>は教育や文化・社会現象など、人の営み全てに関わりながら拡がりをみせる萬画家・石ノ森章太郎の人生観そのものです。 現在、未完であった代表作『サイボーグ009』は、彼の意志を継ぐ者により完結され、また東日本大震災で被災した郷里では、石ノ森作品に励まされた人々が震災復興に奮闘しています。<萬画>は、石ノ森没後もその可能性を拡げながら、<希望の光>として私たちの心を照らし続けています。本展は「世界一多作なマンガ家」の多様性、先見性を顕彰するものです。
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展覧会
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