「森村泰昌 なにものかへのレクイエム──戦場の頂上の芸術」のギャラリートーク
スピーカー
江上ゆか
会場
会期
2011年4月29日~6月12日
展示について
「森村泰昌 なにものかへのレクイエム―戦場の頂上の芸術」 森村泰昌は、名画の登場人物や女優などに自らが「なる」というユニークな手法で、80年代より一貫してセルフポートレートの写真作品に取り組み、国内外で高い評価を得てきた美術家である。この展覧会では20世紀の男たちをテーマとする最新シリーズ〈なにものかへのレクイエム〉を、完全版で紹介した。 美術史や女優をとりあげた以前の作品では、女性に変身するイメージの強かった森村だが、このシリーズでは一転して、三島由紀夫やゲバラ、アインシュタインやピカソなど、戦争と革命の20世紀を生きた男たちの姿に挑んだ。さらに「硫黄島の星条旗」など、歴史的瞬間をとらえた報道写真を題材に、独自の解釈で過去を検証し、現代に甦らせる。レクイエムとは、過ぎ去った人物や時代への哀悼と敬意をこめつつ、その姿を未来へ伝えること、と森村は言う。このシリーズで森村は、自らの身体という器に歴史の記憶を移し替え、過ぎ去った人物や時代への敬意をこめつつ、その姿を伝えてゆこうとしているのである。 なお本展は2010年3月より約1年をかけて、東京都写真美術館、豊田市美術館、広島市現代美術館、兵庫県立美術館の順に巡回した。
アーティストについて
森村泰昌(もりむら・やすまさ) 1951年、大阪に生まれる。1978年、京都市立芸術大学卒業。1985年よりセルフポートレイトの作品制作を開始。1988年「ヴェネツィア・ビエンナーレ アペルト’88」、1989年「アゲインスト・ネイチャー」(サンフランシスコ近代美術館他巡回)に出品。以後、国内外の多数の展覧会に参加。代表作に古今東西の名画を題材にした〈美術史〉シリーズ、映画の登場人物を題材にした〈女優〉シリーズ、フリーダ・カーロを題材にした「私の中のフリーダ」や、スペインの巨匠ゴヤの版画集「ロス・カプリチョス」を題材に現代諷刺を展開した「ロス・ヌエボス・カプリチョス」など。その他、演劇『パンドラの箱』(野田秀樹作、蜷川幸雄演出、1999年)や映画『フィラメント』(辻仁成監督、2002年)に出演、著作多数。
スピーカーについて
江上ゆか(えがみ・ゆか) 1969年兵庫県生まれ。京都大学文学部哲学科(美学美術史学専攻)卒業。1992年より兵庫県立近代美術館に勤務(移転にともない2002年4月より兵庫県立美術館と名称変更)。「震災と美術-1.17から生まれたもの」、「未来予想図 私の人生☆劇場」(いずれも共同企画)、「「その他」のチカラ。-森村泰昌の小宇宙」などの展覧会を担当。