杉浦邦恵は1963年、20歳の時に単身渡米し、シカゴ・アート・インスティテュートで写真と出会います。留学当初、写真を専攻する学生は杉浦をのぞいて殆どおらず、美術学校では絵画や彫刻がまだ主流という時代でした。しかし彼女は、表現としての写真の可能性にいちはやく注目し、実験的な手法によって制作をおこなっていきます。魚眼レンズによる画像の歪み効果の使用や、人物と風景のモンタージュ、ソラリゼーション、モノクロとカラー・ネガの併用など、制作のプロセスを重視した表現形式を作家は最初期から模索してきました。
1967年ニューヨークに拠点を移した杉浦は、写真の伝統や因習を破ろうとする試みを本格的にすすめていきます。アクリル絵の具やカンヴァスを作品制作に取り入れるなど、写真と絵画を融合させる手法を展開し、ポップアートを始めとする60年代以降のアメリカのアート・シーンを背景にその渦中に身をおきながら、杉浦の表現形式は洗練され続けていきます。いっぽう、写真は光によって描かれるメディアである、という根源的な視点に立ち、伝統的なフォトグラムの手法をもとに、植物、動物、人間へとモチーフを発展させながら、独自の様式を生み出していきます。本展ではその50年を超える足跡をたどるとともに、杉浦の表現の先駆性と独自の世界観をとらえ、作品自体の魅力に迫ります。
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