初夏の頃

山口蓬春の描いた明治・大正・昭和

ARTLOGUE 編集部2019/04/12(金) - 02:31 に投稿
山口蓬春は、東京美術学校日本画科を大正12年(1923)に卒業するまで、数多くの古典絵画を研究しやまと絵の基礎を築きました。その後、新興大和絵会での活躍により、近代化をめざした数多くのやまと絵の風景画を手がけていることはよく知られています。しかしその一方で古典絵画の研究成果が結実した歴史画制作の名手でもあったのです。 こうした真摯な研究態度も手伝い、蓬春のもとには歴史画制作の依頼も舞い込むようになります。それらの作品には西洋画科時代に培った確乎たるデッサン力を基に、綿密な現地視察、自らが甲冑や装束を着用してモデルとなり歴史人物画の制作など、時代の証人・蓬春ならではの緻密な時代考証の技術が寸分の狂いもなく集約されています。 本展では蓬春が『天皇の世紀』(大佛次郎著)の挿絵原画(昭和42年)として描いた明治時代の日本のすがたを中心に、大正時代の風俗を活写した《女の肖像》(大正元年頃)、《初夏の頃》(大正13年)、昭和大典の皇室儀礼を描いた下図(未発表)なども展示いたします。 なお、この度の改元を祝賀して、皇居宮殿正殿松の間のために蓬春が描いた杉戸《楓》下絵、ならびにその制作過程が窺われる素描など、皇室ゆかりの収蔵品もあわせてご覧ください。