シュウゴアーツ

森村泰昌<br>「私」の年代記 1985〜2018

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 22:08 に投稿

森村芸術とは何か。

森村は⾃らを20世紀・昭和を出⾃とする⽇本の芸術家である、ということに⾃覚的です。⽇本は明治維新後は⻄洋⽂明・⽂化に影響を、太平洋戦争後はアメリカ⽂明・⽂化に影響を強く深く受けてきました。古くはそれは中国⽂明・⽂化でした。そうした⽇本の「古層」的な⽂明⽂化受容の精神構造を前提に、⾃らの芸術のあり⽅を追い求めてきました。そこには時代精神と歴史精神の両側⾯に⽴脚しようとする森村の決意・態度が伺えます。

森村芸術とは、⾃分ではない何かになる試みを続けながら、⾃分であることの意味を問い続ける営みの集積です。他者及び他者の芸術成果・歴史的事件に対する独⾃の分析を加えながら、⾃分の⾝体を⽤いて写真・映像・パフォーマンス表現をすることを考えれば、森村芸術とは、成果としての撮影作品だけではなく、実践としての現場もまた森村芸術の重要な⼀部を占める、と⾔ってもよいかもしれません。森村が作品において現場感の表出を⼤事にしているのはその表れです。

藤本由紀夫 「STARS」

ARTLOGUE 編集部2017/11/18(土) - 18:20 に投稿
Yukio Fujimoto, STARS, 1990, mixed media, 18 点組

 

藤本は幼少期より⾃宅で⽗親が使わなくなったカメラ、映写機、オープンリールのレコーダーなど50-60 年代に最先端であった機器をおもちゃ代わりにして過ごしました。遊びの延⻑でテープの⾳を切り繋いだり、ラジオのノイズを録⾳していた経験は、後年当時としては珍しく全室スピーカーの設備が備えられた⼤阪芸術⼤学の電⼦⾳楽のコースへ進むきっかけでもありました。電⼦⾳楽もアナログからデジタルへの移⾏期を迎える頃「スピーカーから発する⾳が全て等質に聞こえる」経験をした藤本はやがてスタジオを出ます。そして再び⾃宅で藤本が⾒つけたものはおもちゃのオルゴールでした。⼤きな⾳を作ることから⼩さな⽣の⾳を聞くことへの転換における新鮮な驚きと共に、⾳とは共鳴する空間そのものである、という気づきはその後の制作に⼤きく影響を与えます。また幼少の頃よりそうとは知らずに印象付けられていたマルセル・デュシャンの世界に⾜を踏み⼊れ、さらにジョン・ケージを⾒直し検証するに⾄ったのもこの時期のことです。