石膏

青木野枝 ふりそそぐものたち

ARTLOGUE 編集部2018/12/19(水) - 02:32 に投稿
青木野枝は、大学在学中より一貫して鉄を素材に作品を制作してきた彫刻家です。 その作品の佇まいは「鉄彫刻」という言葉が呼び起こすイメージとは対極にあるものです。 工業用の鉄板を溶断し切り抜いた持ち運び可能なピースの一つ一つを、まるで空間に置いて行くように溶接し、つなぎ合わせることで生み出される作品。 それは、まるで空中に描かれたドローイングのように展開し、見る者と空間を共有しつつ、その空間そのものの質と意味を鮮やかに変容させるのです。 空気中に漂う水蒸気や微粒子など我々を取り巻く目に見えないものたちの存在、日常のうちに何気なく目にした物事から得た心の揺らぎ、自らの実感に根差した世界観。 それらをモチーフに、それに見合う美しい風景を呼び覚ますこと。 青木の作品は、そのための媒体として存在するもののようにも思えます。 この展覧会は、九州の公立美術館においては初となる青木の個展です。 近作および新作のインスタレーションによって構成される本展では、石鹸や石膏など近年青木が鉄とともに用いてきた素材に加え、色ガラスという新たな素材を使用した作品も公開されます。 長崎市に深い関わりを持つ家系に生まれた青木。 長崎という土地と作家としての青木とがはじめて出会う機会となるこの展覧会で新たに生まれる風景を、ぜひご覧ください。