VRで復活! 森美術館「未来と芸術展」。美術館3.0時代の始まり。
2020年5月1日、ARTLOGUE が企画・制作(撮影及び技術協力:株式会社exAgent)させていただいた森美術館「未来と芸術展」の3Dウォークスルーが公開されました。
◯ Mori Art Museum DIGITAL「未来と芸術展」3Dウォークスルー
https://my.matterport.com/show/?m=k49Cr68caXk
「未来と芸術展」は、南條史生さん(森美術館特別顧問)が館長として最後にキュレーションした展覧会でしたが、新型コロナウイルスによって2月26日から休館し、そのまま開館することなく終了してしまいました。
このVRアーカイブ・プロジェクトは、展覧会の撤去直前、3月26日に南條さんの英断で急遽撮影が実現しました。3DVR空間内には、南條さんの解説ビデオ(28本!)の他、作家オリジナルの作品ビデオなど、盛り沢山の内容になっています。
本展では、所謂アートのみならず、ネオ・メタボリズム建築やロボット、バイオ、AI など最先端のテクノロジーを駆使した作品が展示されています。
新型コロナウイルスにより人類がテクノロジーの無力と未来への不安を感じている最中、副題に「人は明日どう生きるのか」と冠する同展が終了に追い込まれたことに運命を感じます。
人類のアーカイブの歴史は図・文字・絵・写真・動画と、情報が質・量共にリッチになるのに伴い進化してきました。
ウイルスにより意図せず閉幕せざるを得なかった「未来と芸術展」ではありますが、先端的テクノロジーであるVRアーカイブの実現によって、ある種完成したとも言えるのではないでしょうか。
美術館3.0時代の始まり。
ARTLOGUEでは、その前身となるギャラリートークの配信プロジェクト「CURATORS TV(大阪市立大学の研究プロジェクト)」を2010年からスタートさせ、当時より一貫して、次世代の美術館 3.0時代も見据え、新しいテクノロジーを用いた様々なアートプロジェクトを実施してきました。
美術館の基本機能である収集、保存、研究、展示のみの1.0時代、教育・普及が盛んになった2.0時代、そして、テクノロジーの進化も含めより多様な機能も要求される3.0時代には、コンテンツメーカーとしての美術館像が必要とされると想定し、2014年頃から展覧会のVRアーカイブもテストをしていました。
今回、南條さんの英断で実現したこの森美術館「未来と芸術展」VRは、ARTLOGUE にとってのみならず、アートや美術館の歴史的にも、とても重要なプロジェクトです。
現在、社会の情勢も踏まえて、展覧会VRアーカイブのプラットフォーム「ARTLOGUE VR(仮)」の立ち上げも準備しており、すでに、複数の美術館とお話をさせていただいています。
もし、展覧会のVRアーカイブにご興味のある美術館や、主催者様がいらっしゃいましたらお気軽にお声がけください。
◯「ARTLOGUE VR(仮)」に関するお問い合わせはこちらから
https://www.artlogue.org/node/4192
南條史生氏からVRアーカイブ・プロジェクトについてのメッセージ
わたしが森美術館の館長として最後に未来への思いを託してキュレーションした「未来と芸術展」が、新型コロナウイルスの問題で会期途中で閉鎖を余儀なくされたことについては、残念な思いがある。
ただ、この展覧会の最後はバラ色の未来を描くのでなく謎に包まれて終わっている。
未来は単純に明るいわけでなく、予想外の災害や、進歩がもたらす新たな問題、人間の愚かさによる災忌など、総合的に考えると極めて難しい時代が送るのではないかという暗示がある。
今回の新型コロナ問題では奇しくも、人類は予想以上にもろく、弱い存在であることを露呈した。
しかし、人間が叡智を結集すれば未来は開けるはずだと信じたい。
テクノロジーの進化で「未来と芸術展」のビジョンとメッセージを将来に残せるということもその証であろう。
未来は自然に向こうから来るわけではない。われわれが今なす判断が未来を作っている。
この「未来と芸術展」VRを鑑賞し、我々がどう未来へと向き合うといいのかを考えてみていただきたい。
南條史生
森美術館特別顧問
◯ Mori Art Museum DIGITAL「未来と芸術展」3Dウォークスルー
https://my.matterport.com/show/?m=k49Cr68caXk