各分野で活躍するクリエイター達が、東京という都市の過去を新しい視点で検証し、未来の発見をしていくアートイベント「TOKYO 2021」。
本企画は東京・京橋にある戸田建設本社ビルの解体直前の空間を利用し、従来のオフィス街では難しかったダイナミックな展開を、TOKYO 2021実行委員会(総合ディレクター 藤元明氏/企画アドバイザー 永山祐子氏)が、戸田建設の主催の元に実現したもの。
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックは、メディアによって演出された日本が国内外に発信される場ともいえます。その表層化された日本像と価値観に対し、「TOKYO 2021」では、「建築展」と「美術展」を通じて、「2021年以降を考える」ことに向き合います。
2019年8月3日(土)から24日(土)にかけて開催された建築展に続き、9月14日(土)から10月20日(日)まで美術展「un/real engine ―― 慰霊のエンジニアリング」が行われています。オリンピックや万国博覧会等の大規模な「祝祭」が開催される狭間で大規模な「災害」に見舞われてきた日本。いわば「祝祭」と「災害」が繰り返されてきたこの国の歴史の中で、文化や科学は新たな想像力や表現、技術を生み出してきました。美術展ではその営みを「慰霊のエンジニアリング(engineering of mourning)」と名付け、その系譜の一部として日本現代美術史にフォーカス。情報社会化がはじまった1970年代を起点に、アーティスト達が現代美術を一種の「シミュレーター」として機能させながら、同時代の文化やテクノロジーを取り入れ、いかに様々な災害記憶をヴァーチャル化し、「unreal」な領域で作り変え、投企してきたのか、その歩みをたどっていきます。
本展は、「SiteA 災害の国」と「SiteB 祝祭の国」の2つのエリアで構成され、会田誠氏、キュンチョメ氏、今野勉氏、SIDE CORE氏、高山明氏、弓指寛治氏など、総勢29アーティストが参加。50点近い作品が展示されています。
「SiteA 災害の国」の入口付近に展示されているのは、梅沢和木氏の《Summer clouds》と命名されたデジタルコラージュ作品。
梅沢氏は、インターネット上の画像をコラージュした作品で知られています。《Summer clouds》は、「Cloud(雲)」と「Crowd(群衆)」というふたつの意味を連想させ、「雲」は「大空と爆煙」、「群衆」は「祝祭と災害」といった陽と陰の両面を表現しています。
渡邉英徳氏の《「忘れない」震災犠牲者の行動記録》は、岩手県における震災犠牲者の「地震発生時」から「津波襲来時」までの避難行動をまとめたデジタルアーカイブ。犠牲者の声なき声を可視化し、一人でも貴い命を失わないよう、震災の教訓として後世に残していくことを企図しています。
「SiteB 祝祭の国」のエリアの入口には、檜皮一彦氏の《hiwadrome : type THE END spec5 CODE : invisible circus》が展示されています。
岡本太郎の《太陽の塔》の顔を正面に置き、多数の車イスを使い、発光させた作品が目を惹きます。《太陽の塔》の顔を展示することで、1970年に開催された「日本万国博覧会(大阪万博)」を想起させます。「人類の進歩と調和」をテーマとした大阪万博は、技術文明の進歩を示すだけではなく、その進歩が同時に自然や人間性を損なうなど、様々なひずみにも目を向けて、この問題をどう解決し、「調和」のある「進歩」をどう実現していくのかを考えさせました。
檜皮一彦氏の作品の後ろには、弓指寛治氏の盆踊りをテーマにした作品《黒い盆踊り》が展示されています。盆踊りは、最も身近な祝祭のひとつで、死者を迎えて送り出すもの。本作品は、生者と死者の本質的な関係性を意識させます。
キュレーターの黒瀬陽平氏は「日本の歴史として、災害の後には、それを乗り越えるために祝祭が行われてきました。本展では、災害と祝祭という両面を作品の中に表現しています。アートとの関わり・応答を体感して欲しい」と述べています。
今回ピックアップした作品の他にも、多くの展示が行われています。ぜひ会場に足を運んで、これまでの「災害」と「祝祭」の歴史と、2021年以降の日本に思いを馳せてみては?
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■TOKYO 2021美術展「un/real engine --慰霊のエンジニアリング」
会 期:9月14日(土)〜10月20日(日)
会 場: TODA BUILDING 1F (東京都中央区京橋1-7-1)
時 間:11:00~20:00
定 休:火曜日
料 金: 無料
*公式ウェブサイトより要事前登録