「堀江友聲(ほりえゆうせい)」(1802-1873)という絵師の名は、全国ではほとんど知られていないでしょう。その一方で、島根県東部を中心とした一部の地域では、今日まで熱烈に愛好されてきました。こうした評価の違いが生じた要因の一つに、友聲画の優品の多くが主に個人の間で秘蔵されてきたことが挙げられます。とかく忘却の憂き目に逢いかねない地方絵師の存在は、独自の審美眼をもった地域の人々により、守り伝えられてきました。 そんな堀江友聲の回顧展としては36年ぶりとなる本展では、友聲が、諸国遊歴を経て京都の名門・海北家の養子となった青年期から、丹後国宮津で勇躍した壮年期、そして出雲国広瀬藩の御用絵師となった晩年期までの各期の代表作を一堂に展示します。友聲がこの地域で何を期待され、どのような戦略で生き抜き、そしてなぜその作品が愛されつづけたのか―地方画壇で確固たる地歩を固めた一人の絵師の実像に迫ります。
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