日本の美術品市場規模は2,460億円、3年連続で増加! 日本のアート産業に関する市場調査2018

鈴木 大輔2019/03/04(月) - 16:09 に投稿
一般社団法人 アート東京

日本最大級の国際的なアート見本市「アートフェア東京」を主催する「一般社団法人 アート東京(以下、アート東京)」は、約2万人を対象とした「日本のアート産業に関する市場調査2018」を実施し、日本全体の美術品市場規模を2,460億円と推計しました。

これは、2016年より継続している同調査の2,431億円、2017年の2,437億円に続き3年連続で増加という結果となっています。販売チャネル別に見ると、ギャラリーと百貨店は、増減しながらも2大チャネルを維持、アートフェア、インターネットサイト市場は過去3年間、増加傾向となっています。

また、本調査では市場規模の推計に加えて、「美術品の輸出入動向」、「ミュージアムへの訪問状況」を分析、さらに、将来のアート産業を考える上で指針となる層として「国際経験豊かなビジネスパーソン」(299サンプル)を対象にアートに係わる意識調査を実施しました。

 

美術品、美術関連品、美術関連サービスの市場規模

アート産業に関する市場規模として、古美術や洋画・彫刻・現代美術などの「①美術品市場」を2,460 億円と推計しました。これと合わせて、グッズやカタログなどの「②美術関連品市場」が470 億円、美術館入場料や日本各地で開催される芸術祭消費額を含む「③ 美術関連サービス市場」が5 0 4 億円となり、3 つの市場を対象とした総額は推計3,434 億円となりました。

 

図表1.アート産業に関する市場規模の全体像
図表1.アート産業に関する市場規模の全体像
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造

 

画廊・ギャラリー、百貨店という主要チャネルに続き、アートフェア、インターネットが拡大傾向

美術品市場2,460億円を販売チャネル別に見ると、国内画廊・ギャラリー735億円に次いで百貨店644億円が主要チャネルとなっています。また、アートフェア253億円やインターネットサイト180億円は、3年連続で増加傾向にあります。

 

図表2 チャネル別の美術品市場規模
図表2 チャネル別の美術品市場規模
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造

 

多様なジャンルの美術品でなりたつ日本の美術品市場

ジャンル別の美術品の市場規模は、洋画(548億円)、日本画(436億円)、陶芸(402億円)、版画(294億円)に現代美術(平面)(222億円)が続きます。現代美術は(平面)と(立体・インスタレーション)を合わせると391億円。日本の美術品市場は洋画市場が高く、一方で、日本画、陶芸、工芸、掛軸・屏風、書など、日本の美術史に緋づいた多様なジャンルによって支えられていることが、改めて分かります。生活文化や歴史からの影響を受けている日本の美術の奥深さが調査にも現れています。また、グッズなど美術関連品は470億円となっています。

図表3 ジャンル別の美術品・美術関連品市場規模
図表3 ジャンル別の美術品・美術関連品市場規模
※ジャンル別の数値には重複が含まれるので、ジャンル別の美術品購入額合計はチャネル別の美術品購入額合計と数値が異なることに留意されたい。
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造 

 

美術品の輸出入動向を貿易統計の数値を元に分析を実施 

美術品の輸出入動向については、1990年に6,000億円規模まで膨らんだ美術品輸入も1993年以降は500億円未満で推移してきました。近年の2011年以降は再度拡大傾向にあり、2017年は580億円となっています。
また、2006年までは100億円を下回っていた輸出についても、2007年以降、増減を繰り返しながらも拡大傾向にあり2015年以降は300億円から400億円の範囲で推移しています。 
 

図表4 美術品の輸出入額の推移
図表4 美術品の輸出入額の推移
出所)財務省「貿易統計」を基に(一社)アート東京・(一社)芸術と創造作成 

 

ミュージアムへの訪問状況

近年、日本においてはインバウンドを意識した魅力向上やユニークベニューとしての活用など、ミュージアムの可能性について注目が集まっています。今回、「日本のアート産業に関する市場調査2018」では、より詳細にミュージアムへの訪問状況を明らかにしています。
 約37%の方々は過去1年間にミュージアムに訪問しています(ただし、月に1回以上訪問する方は少数)。具体的に訪問しているミュージアムとして、「東京国立博物館」、「国立西洋美術館」、「東京都美術館」、「上野の森美術館」など上野に立地するミュージアムが上位にのぼります。そのほか、「国立新美術館」、「江戸東京博物館」、「百貨店での展示会・展示」なども割合が高くなっています。 

図表5. 過去1年間に訪問したミュージアム
図表5. 過去1年間に訪問したミュージアム
※東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県居住で過去1年間に1回以上ミュージアムに訪問したと回答した方に調査を行った。
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造

 

国際経験豊かなビジネスパーソンから読み取れる将来のアート産業への指針

「日本のアート産業に関する市場調査」では、毎年、特定の層を分析対象として絞込み、アートに係る様々な実態を明らかにしています。今回は、1次調査の回答者のなかから「国際経験豊か」な、「一都三県在住の20代~50代の就労者」で「過去1年間に2回以上美術館・博物館に訪問した」という条件にあてはまる人々を抽出。アート産業を考える上で将来の指針となる層として「国際経験豊かなビジネスパーソン」(299サンプル)と定義し分析を行いました。(※2016年は「経営者コレクター層」、2017年は「若手コレクター層」で調査を実施) 

 

国際経験豊かなビジネスパーソンの美術品購入状況と今後の購入意欲

国際経験豊かなビジネスパーソンは、約半数が美術品を購入した経験を持ち(日本全体の調査では「美術品を購入した経験」は約16%)、さらには購入したことがない方でも約3割が購入に関心を持っていることが読み取れます。 

図表6. 国際経験豊かなビジネスパーソンの美術品の購入状況と今後の購入意向
図表6. 国際経験豊かなビジネスパーソンの美術品の購入状況と今後の購入意向
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造

 

 

国際経験豊かなビジネスパーソンの価値観・考え方

2016年の同調査では、一般の人々(全サンプル)に対して芸術への価値観を調査しましたが、同様の項目に関して国際経験豊かなビジネスパーソンにも調査しました。全項目において国際経験豊かなビジネスパーソンの方が高い傾向となり、特に「芸術的視点は、産業競争力の強化において重要である」、「芸術的視点は、あなたの仕事において重要である」といった項目差が大きくなりました。さらに、年代別の調査では、若い世代のほうが芸術的視点をよりビジネスと結びつけて考えていることがわかりました。
 国際経験豊かで若いビジネスパーソンは、「ビジネスにとって芸術的視点が重要である」と考えている傾向が顕著に現れており、将来的に、アートを余暇としてだけでなくビジネスと結びつけて考えるエリート層が広がっていく可能性があることが予想されます。 
 

図表7. 芸術に関する価値観(2016年調査との比較)
図表7. 芸術に関する価値観(2016年調査との比較)
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造
​​​​​

 

図表8. 芸術に関する価値観(年代別)
図表8. 芸術に関する価値観(年代別)
出所)「日本のアート産業に関する市場調査2018」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造 

 

アートフェア東京2019
https://www.artlogue.org/node/4446

 

アクセス数
0
4
4