杉本博司「サヴォア邸」(建築家:ル・コルビュジエ)(c)Hiroshi Sugimoto/Courtesy of Gallery Koyanagi
発明家ニセフォール・ニエプスによって撮影された世界で最初の写真が、作業場の窓から見える納屋と鳩小屋であったように、19世紀に誕生した写真は当初から建築と強く結びついていました。特に20世紀の近代建築運動では、多くの建築家が自らの建築を社会に認知させ、その運動を推進する手段として写真を重視していました。そこで強調されたのは、写真が有する記録媒体としての透明性であり、この傾向は今日でも建築ジャーナリズムを中心として大量に生産・消費される建築写真に受け継がれています。その一方で、そうした建築写真とは微妙に異なる立ち位置から建築に関心を示す写真家や現代美術家がいます。
本展覧会は、国内外で活躍する13名の作家の作品を通じて、現代の写真表現と建築の間に存在する、より多義的で複雑な関係を示すコンセプトのもとに企画されました。会場にはトーマス・ルフ、カンディダ・へーファーら「ベッヒャー派」から、杉本博司、ホンマタカシなど多岐にわたる作家による建築写真と同時に、被写体の中から6つの建築物の模型も併せて展示します。模型を通じて建築物の全体像を把握することで、個々の写真表現の魅力や特徴がより深くお楽しみいただけます。
【本展の見どころ】
■国内外で活躍中の13人の写真家、現代美術家による36点の写真作品と映像作品1点を展示
■「サヴォア邸」(ル・コルビュジエ)、「トゥーゲントハット邸」(ミース・ファン・デル・ローエ)、「カノアスの邸宅」(オスカー・ニーマイヤー)といったモダニズム建築の名作からヘルツォーク&ド・ムーロンの近作「エルプフィルハーモニー・ハンブルグ」まで、国内外の13の有名建築が被写体
■被写体となった6つの建築物の模型を展示
■建築家・AtelierTsuyoshi Tane Architects(建築家:田根剛)による、展覧会テーマを踏まえた会場設計
■作家について:
13名の作家の作風は多岐に渡りますが、そこにいくつかの傾向を見ることができます。例えば建物へ私的な視線を向け、特定の時間と場所における一回性の経験として建築を捉えようとする一群の作家達がいます。写真は外の世界を記録すると同時に撮影者の内面を反映します。彼らにとって建築は空間的かつ時間的な体験であり、そこで得た印象は撮影された写真にも色濃く現れています。極端な場合は、一般的な建築写真に見られるような客観的な記録性はほとんど顧みられません。またそれとは逆に、写真の持つ透明な記録性を重視しつつ、それを固有の作家的表現へと転化するアーティストたちがいます。デュッセルドルフ美術アカデミーでベルント&ヒラ・ベッヒャーに師事した、いわゆる「ベッヒャー派」にはこの傾向に属する作家が数多くいますが、今回はそのなかからトーマス・ルフとカンディダ・へーファーの作品を紹介します。そして最後は、建築を概念的に扱う作家達です。具体的な建築物を撮影することから離れつつも建築を作品のテーマする、あるいは個々の建築物の背後にある建築家の思考という不可視のものを写真で捉えるなど、より自由で多彩な実践が含まれます。
出品作家:
トーマス・デマンド、マリオ・ガルシア・トレス、畠山直哉、カンディダ・へーファー、ホンマタカシ、今井智己、ルイザ・ランブリ、宮本隆司、トーマス・ルフ、杉本博司、鈴木理策、米田知子、ジェームズ・ウェリング
開催概要
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会 期:2018年8月4日(土)〜10月8日(月・祝)
会 場:建築倉庫ミュージアム
時 間:火〜日曜 11:00~19:00(最終入館18:00)
休 館:月曜(祝日の場合、翌火曜休館)
入館料:一般3,000円、大学生/専門学校生2,000円、高校生以下1,000円
(同時開催中「UNBUILT:Lost or Suspended 」展の観覧料含む)
URL:https://archi-depot.com/exhibition/a-gaze-into-architecture
「建築」への眼差し -現代写真と建築の位相- フォトギャラリー
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