project N 73<br>中村太一

ARTLOGUE 編集部2018/11/29(木) - 17:45 に投稿

中村太一の作品は、童画のようなベールの下に、辛辣な批判精神を隠し持っています。彼の作品には、キャンバスに油彩、あるいは、紙に水彩で描く具象作品、〈over painting〉シリーズと名づけられた、雑誌の切り抜きの上にアクリル絵具や油絵具で自由にストロークを加えたミクストメディアの作品など、いくつかのタイプがあります。いずれの作品もシンボルやメタファーがもちいられ、表層の表現の背後に、作者の一貫したメッセージが深く込められています。

こうしたイメージの選択からも容易に推測できるように、〈over painting #2〉シリーズもまた、中村が強い関心を寄せる環境問題と密接に結びついています。写真や記事の内容を無視してその上を無造作に走るストロークは、人間による身勝手な開発が、生態系本来の循環を分断してきたことのメタファーになっているのです。
このように、物語性を喚起する具象画にしても、コンセプチュアルなミクストメディア作品にしても、自然の摂理を逸脱することで進歩を続けてきた人間に対する複雑な想いは、中村の作品に一貫して指摘できます。

オロール・ドゥ・ラ・モリヌリ「Hommage à Alaïa」

ARTLOGUE 編集部2018/11/27(火) - 20:59 に投稿

パリを拠点に活動するアーティストでイラストレーターのオロール・ドゥ・ラ・モリヌリ(Aurore de La Morinerie)の個展「オマージュ・ア・アライア(Hommage à Alaïa)」が、Akio Nagasawa Gallery Aoyamaで開催されます。

本展では、オロールが、ファッションデザイナーのAzzedine Alaïa(アズディン・アライア)と彼のメゾン「ALAÏA(アライア)」のために手がけた作品の貴重な原画を展覧します。

オロールは、パリを拠点に活動するアーティスト・イラストレーターです。水彩やインク、水墨を中心としたドローイングに加え、伝統的なエッチングプレス機を使用した、一品制作のグラフィカルなモノタイプの作品を発表しています。本展では、昨年急逝したアズディン・アライアのために画いたモノタイプ作品を和紙に刷り制作した新作や、2013年にパリ市立ガリエラ美術館で開催された「Azzedine Alaïa」展出品作品を紹介します。全てアジア初公開となります。没後一年を機に、“アライアへのオマージュ”と題された作品の数々をご覧ください。

特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」

ARTLOGUE 編集部2018/11/27(火) - 19:47 に投稿

歌川国芳(1797-1861)は、旺盛な好奇心と柔軟な発想、豊かな表現力を武器として、武者絵や戯画に新機軸を打ち出し、幕末にいたって浮世絵のさらなる活性化につなげた浮世絵師です。今日では「奇想の絵師」としてその人気は定着してきています。

親分肌の国芳を慕って多くの弟子が集いましたが、なかでも「最後の浮世絵師」と称される月岡芳年(1839-92)が特筆されます。国芳の奇想をよく受け継ぎ、さらに和洋の融合を推し進めた彼の作品は、近年再び高く評されるようになってきました。

本展では、国芳、芳年のほか、芳年とともに国芳門下の双璧とされた落合芳幾(おちあいよしいく)(1833-1904)などにもスポットを当て、国芳が切り開いたさまざまな新生面を弟子たちがいかに継承、変化させていったのかをたどってみる機会とします。人々の嗜好に合わせ最後まで新しい画題と表現に挑み続けた、国芳を領袖とする「芳ファミリー」の活躍をご覧ください。展示作品には残虐な絵も含まれます。ご用心!