長谷川等伯と水墨画
墨の濃淡が画面に無限の奥行きと広がりをもたらす水墨画。中国を発祥とするこの斬新な絵画表現は日本にも伝播し、独自の表現美を獲得しました。この立役者として欠くことのできない画家が、日本独自の感性に基づく水墨表現を切りひらいた長谷川等伯です。
能登に生まれた一介の地方絵師に過ぎなかった等伯は、33歳の頃に京に上り、画壇の中心的な存在まで昇りつめた画家です。等伯は、中国の水墨画に見られる光や大気の表現を学習しながら、そこに日本人の感性に根差した繊細な情趣を加えることで、独自の画境を切りひらきました。
本展では等伯の作品を中心に、日本・中国の名品を交え、伝統を基盤としながらも新たなる風を興した創作の源に迫りつつ、その遺風を受け継いだ水墨画の多様なすがたに迫ります。