昨年2023年に始まった、史跡が舞台となったアートプロジェクト 「アートサイト名古屋城」。名古屋城「秋の特別公開」として、6組のアーティストによる作品と史跡が交差する「アートサイト名古屋城 2024 あるくみるきくをあじわう」が、2024年12月15日(日)まで開催中です。会期中、夕暮れから夜間にかけて楽しめる3日間(12月6日(金)・7日(土)・8日(日))限定の特別イベント『ナイトミュージアム名古屋城』も行われます。
尾張藩の拠点として築かれて以来、名古屋の成長を見守ってきた名古屋城は、国内外より年間200万人以上もの人々が訪れる観光名所としても知られています。本プロジェクトでは、古くから人々が楽しんできた『観光』という行為そのものに着目。地域の重要な観光資源ともいえる名古屋城を舞台に、高力猿猴庵、蓑虫山人、狩野哲郎、久保寛子、菅原果歩、千種創一 + ON READINGといった古今の6組のアーティストによる「あるくみるきく」から出現する大規模な作品を通じて、名古屋城の魅力をまた違った角度から体感できるまたとない機会となっています。
民俗学者の宮本常一は「歩く」「見る」「聞く」を旅の基本とし、日本観光文化研究所を設立し、雑誌『あるくみるきく』を刊行しました。観光地としてよく知られる史跡名古屋城を会場とする本展は、宮本による「あるく」「みる」「きく」という態度に着想を得ています。
アートサイト名古屋城プロデューサー・プロジェクトマネージャーの野田智子氏は、「このアートサイト名古屋城は、去年からスタートしました。名古屋城主催で現代アートを紹介するというのは、初めての事業です。去年は『名古屋城 2023 想像の復元』というテーマで展覧会を開催し、名古屋城が長年取り組んできた改修や復元といったものに着想を得て行いました。実は名古屋城は年間200万人以上のものが人々が集まってくる、日本有数の観光地なので、今年はそういった観光や人間が観光する営みそのものを表現するような企画を考えました」と述べています。
キュレーターの服部浩之氏は「いわゆる美術館などの展覧会場ではなく、名古屋城というお城を観光で見に来る方が多い場所です。観光地として名古屋城を楽しんでいただく中で、同時に名古屋城内でのアート作品もご覧いただければと思います」と語っています。
次に、アートプロジェクト 「アートサイト名古屋城」の中でおすすめの作品を3つピックアップします。
1.狩野哲郎
植物や鳥など、人間以外のものたちへと目を向ける狩野哲郎氏は、屋外の水飲み場やバナナ(芭蕉)の木など、通常の観光ではあまり注目されない場所に立体作品を展開します。
さらに本丸御殿表書院内では、対面所の障壁や襖に描かれた動植物への応答ともなるような立体作品を四部屋にわたって展開しています。狩野氏は「ここには何らかの調度品が置かれていたと思うのですが、藩主たちがもしその時代に存在し得なかったこういったオブジェや物を見たときに、誰か面白がる人がいればいいなという思いで作品を制作しました。江戸時代には絶対になかったもので、現在もたくさんあるわけではないのですが、そういう時代のものを中心にチョイスしています」と語りました。
2.久保寛子
地域に伝わる神話や伝承、歴史などに着想を得て彫刻作品を制作する久保寛子氏は、本展では火災から城を守るとされるシャチホコに着目します。シャチホコのルーツは水を司る神獣マカラにあるとされ、さらにその起源を辿ると古今東西の神話に登場する龍へと行きつきます。
「私は、現代アートというジャンルで彫刻をやっていますが、古くていいものを見るたびに、そこには敵わないというか、圧倒的な敗北感みたいなものが常にあって、古いものの時間に支えられてきた歴史にすごくリスペクトがあります。
現代アートはすごく個人的な視座で作るものなので、大きな歴史に支えられたものと対比する上で、何を作ろうか考えました。私は彫刻をやっているので、今回しゃちほこをモチーフに選びました。シャチホコは、水害や火災の際の水の守り神として作られたという点を踏まえ、ルーツを探っていきました。
日本にはシルクロードを通って、龍という形が伝えられてきたといいます。そこを手掛かりに、何とか自分のやってきたことと、名古屋城の歴史に接続したいという思いで作品を作りました」と語っています。
3.菅原果歩
2000年生まれの菅原果歩氏は、名古屋城に棲まうカラスに着目します。昼間は観光客で賑わう名古屋城ですが、夜にはたくさんのカラスが舞い戻ります。菅原氏はカラスたちの様子をサイアノタイプという日光を用いた写真とフィールドノートにより記録しています。
菅原氏は「名古屋城内にテントを張らせていただいて野営しながら、カラスとともに寝て、カラスととも起きる生活をずっとしていました。
太陽とカラスというのは密接な繋がりがあるということが、今までリサーチの中でわかりました。太陽とカラスの繋がりは、神話、伝承とか、日本人だけでなく、中国、韓国、またギリシャ神話の中でも数多く残されています。青写真という技法を使って、日光を利用した制作をカラスと結びつけることができないかと思い、日光写真を使った制作を始めました。
カラスには、黒といった不吉なイメージもあって負の印象が強いのですが、それに対して、幸せの青い鳥というワードもあります。青い鳥に黒い鳥を変換させてみたら、カラスの見え方がどう変わるんだろうといった実験的な意味も込めて制作しました」と述べています。
以上、名古屋城が舞台となった「アートサイト名古屋城 2024 あるくみるきくをあじわう」についてご紹介しました。江戸幕府初代将軍、徳川家康によって1615年(慶長20年)に築城された名古屋城の歴史を感じながら、アート作品の数々に酔いしれてみてはいかがでしょうか。
■アートサイト名古屋城 2024 あるくみるきくをあじわう
会期:2024年11月28日(木)~12月15日(日)
開園時間:9:00ー16:30(閉門 17:00)
作品観覧時間:10:00ー16:30
・西の丸御蔵城宝館、乃木倉庫、本丸御殿への入館は16:00まで
・天守閣には現在入場できません
・12/6、7、8は「ナイトミュージアム名古屋城」に併せて夜間公開します
■ナイトミュージアム名古屋城
会期:2024年12月6日(金)・7 日(土)・8 日(日)
開園時間:9:00ー19:30 (閉門 20:00)
作品観覧時間:10:00ー19:30
・西の丸御蔵城宝館への入館は 16:00 まで
・乃木倉庫、本丸御殿への入館は 19:00 まで
・天守閣には現在入場できません