絵画それとも彫刻なのか、アートそれとも調度品なのか、実用的それとも装飾的なのか、小道具それとも表現物なのか、建築的それとも演劇的なのかーミラノのプラダ財団、プラダ ロンヅァイ(上海)、プラダ 青山店(東京)の3カ所で、屏風の歴史をテーマに沿って解釈し、現代アートと社会性を踏まえ屏風を再考する展覧会「PARAVENT(屏風)」が開催中です。プラダ 青山店では2024年1月29日まで。
プラダ 青山で開催中の「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網 敬一」は、屏風(スクリーン)が層状に配置されたり、屏風(スクリーン)の中に組み込まれたりするデジタル体験が浸透している現在において、屏風がどのような影響を受けているかにフォーカス。
16世紀に制作された式部輝忠の『梅竹叭々鳥図屏風』(六曲一隻・室町時代後期)から始まる本展では、歌舞伎の小道具として設置された屏風や、12世紀の日本の仏教寺院をその由来とし、1930年代に起きた世界的慌時だけでなく戦後にも流行した、路上で紙面に描かれた絵を使って物語を説明する紙芝居の小道具としての屏風に言及しながら、屏風の物語とその担った役割の面から探求します。
今回の展覧会でアート作品を展開する田名網敬一(
田名網の作品は、日本における漫画とネオ・
また、
大規模な作品では、
今回は、本展の中から、屏風のように展開するビデオインスタレーション、ブロンズ像、ビデオマッピングを使用した横線部:本型の彫像をピックアップします。
1.赤い陰影/デジタルアニメーション
こちらの作品は6分44秒のデジタルアニメーションで制作されています。2021年に発表された『赤い陰影』という作品です。
田名網曰く「僕の制作している絵画は、基本的に絵は静止画像なんですが、その絵がどういうふうに動いていくかということを前提に作っています。
今回の映像は、作品が分割されて映っていますが、それらの絵はここ10年ぐらいに書いた、いわゆるキャンバスの絵のある部分を抽出して、その部分を任意に動かしていくというのを、80カット全部で作りました。その80カットの中、プラダの会場で映しているのはその中のほんの少しです。
80の画面で構成する絵は、この映像の僕の制作意図ですが、僕以外の人が、例えばこの僕の映像を自由にアレンジして、全く違うその80のカットを入れ替え、自由に作ってもらっても面白いようにできてるわけです。様々に変化させて新しい映像を作ってもらうというのも、今回のこの映像の最大の意図でもあります」。
2.人間編成の夢(ブロンズ)
こちらの作品はブロンズで制作されています。2020年に発表された『人間編成の夢』という作品です。田名網はこの作品について、次のように語っています。
「戦時中、僕は新潟の六日町というところに疎開していました。農家の離れのようなところに、母親と父親と3人でまだ小さかったんですけど疎開しました。そのときに大腸カタルという病気になってしまって、もう死んでしまうのではないかと恐怖の毎日でした。僕の寝ているところのちょうど正面に窓があって、その窓に巨大な蜘蛛が巣を張っていました。その蜘蛛の巣に小鳥がかかったんですね。そうしたら蜘蛛が一瞬にしてその小鳥を蜘蛛の巣でぐるぐる巻きにして、それをむしゃむしゃと食べたんです。その光景を見て、自分が体力が弱って大腸カタルで寝ているという自分自身と、その小鳥が食べられてしまうというのが死の恐怖として襲ってきたんです。そのときの印象がものすごく強烈に残っていて、今回の立体作品はそのときの蜘蛛をイメージして、その巨大な蜘蛛が飛行機の上に乗っているというものです。
この作品の下の飛行機はアメリカの戦闘機で、戦時中に空襲警報が鳴ると、母親と一緒に防空壕に逃げるわけです。その途中に草むらがあって、そこを通過するときに空からアメリカの戦闘機が急降下してきたんですよ。ちょうど僕の10mぐらいの距離のところに赤い着物を着た女性がいたんですが、その飛行機が空からものすごいスピードで急降下してきて、かなり接近したところでその女性を撃ったんです。多分撃たれて亡くなってしまったんですが、飛行機は何事もなかったようにあっという間に空の彼方に消えていくんです。飛行士の顔がもう表情もわかるぐらいの距離で僕は飛行機を見てました。
戦争の恐怖とその蜘蛛の恐怖が合わさって作品化したんですが、僕の作品は戦争のときの幼児期の経験というものが基本になって作られてるものが結構ありまして、その中の一つです」。
3.光の旅路/スタイロフォームにプロジェクションマッピング
こちらの作品は、プロジェクションマッピングで制作されています。2023年に発表された『光の旅路』という作品です。
田名網は、「僕は本が子供のときから大好きで、本屋さんに行くことが僕の人生で最大の楽しみなんですね。ただ単に読む本だけじゃなくて、色々なオブジェのような本とかもたくさん持っていて、そういうものにも僕は興味がありました。
今回出している本の形をしたオブジェの作品は立体物で作られていて、本をめくってみるっていうことができない本です。この本は本当は10ページぐらいこれがずっと長く続いて、もう少し巨大なオブジェになる予定だったんですが、会場の都合でそんな大きくできなくてこの3ページだけの本になってしまったんです。ですが、この本に映像を映したら面白いだろうなと思い、3ページの中に別々の映像を映してみました。
僕はもう子供のときから無類の本好きだったので、本を買うと臭いを嗅いだり、インクをなめたり、頬に印刷のページを擦り付けたりして、とにかく寝るときも本を抱えて寝るぐらいの本好きだったんですね。そういった、その本というものに対する僕の興味っていうのが、今回のこの立体化した作品の中に投影されているのではないかと思います」と述べています。
以上、プラダ 青山で開催中の「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網 敬一」をご紹介しました。ぜひ、田名網の世界感に浸りに会場を訪れてみてはいかがでしょうか。
■「PARAVENTI: KEIICHI TANAAMI - パラヴェンティ:田名網 敬一」
会期:2024年1月29日(月)まで
時間:11時~20時 ※2023年11月27日(月)は16時~20時まで
会場:プラダ青山店 5階 / 東京都港区南青山5-2-6