2010 年より毎年開催している京都発の国際舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭」。国内外の「EXPERIMENT(エクスペリメント)=実験」的な舞台芸術を創造・発信し、芸術表現と社会を、新しい形の対話でつなぐことを目指しています。演劇、ダンス、音楽、美術、デザイン、建築などジャンルを横断した実験的な表現が集まり、そこから生まれる創造、体験、思考を通じて、舞台芸術の新たな可能性をひらいていくことに重点を置いています。
今年開催予定の「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2023」 は、「まぜまぜ」をキーワードに、多様な⼈々と舞台芸術の出会いと対話が可能になるフェスティバルで、2023 年 9 月 30 日(土)から 10 月 22 日(日)の間に、ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、 THEATRE E9 KYOTO、京都市京セラ美術館等を舞台に展開されます。
「まぜまぜ」は、国内外でさまざまな分断や二項対立的な思考が顕著になってきた現在において、変化や交わることを積極的に取り入れ、可変性や流動性、複数性を思考の軸のひとつとしていくことを提案するキーワードだといいます。言語・民族・国家といった自明の帰属関係を流動的であると捉え、言語のあり方が変遷していくことや混在していくこと、個人のアイデンティティも変化し、他者の影響が混じることなどをプログラムを通して考え、これからの世界を捉え直すきっかけとなることを提案します。
フェスティバルを構成する 3 つのプログラム
フェスティバルが根ざす関西地域をアーティストの視点で探究し、未来の創造的な土壌を耕していくためのリサーチプログラム「Kansai Studies」、世界各地の実験的な舞台芸術を紹介する上演プログラム「Shows」、実験的表現とそれが生まれる背景や、いまを考えるトピックを扱うワークショップやトークが体験できるエクスチェンジプログラム「Super Knowledge for the Future [SKF]」の 3 つのプログラムでフェスティバルが行われます。
1. Kansai Studies(リサーチプログラム)
京都発の国際フェスティバルとして、自分たちが立脚する「地域」について自覚的に捉え、フィールドワークを通して探求するプログラム。アーティストが中心となり、地域住民やプロデューサー、研究者と一緒に、京都や関西の文化を継続的にリサーチしていきます。活動を通じて生まれた思考の軌跡やプロセスは特設ウェブサイトに蓄積され、誰もがアクセスできるオンライン図書館として公開。未来のクリエイターや企画のためのナレッジベースや実験場、アイデアソースとなることを目指します。リサーチメンバーとして、 今村達紀(京都)、谷 竜一(京都)、野咲タラ(京都)、迎 英里子(滋賀)、山田淳也(兵庫)が名を連ねています。
2. Shows(上演プログラム)
世界各地から先鋭的なアーティストを迎え、いま注目すべき舞台芸術作品を上演するプログラム。京都および関西における舞台芸術の変遷と動向に注目しながら、ダンス、演劇、音楽、美術といったジャンルを越境した実験的作品を紹介します。参加アーティストとして、 イ・ラン(ソウル)、ウィチャヤ・アータマート/ For What Theatre(バンコク)、チェルフィッチュ(東京)、
3.Super Knowledge for the Future [SKF](エクスチェンジプログラム)
アーティストは未来を予見する !? とりわけ実験的な舞台芸術作品と社会を対話やワークショップを通してつなぎ、新たな思考や対話、フレッシュな問題提起など、未来への視点を獲得していくプログラム。実験的表現が映し出す社会課題や問題をともに考え、議論し、現代社会に必要な智恵や知識を深めていきます。ここで獲得できるスーパー知識 ( ナレッジ ) は、予測不能な未来にしなやかに立ち向かうための拠り所となるはずです 。
京都市長の門川大作は「芸術表現の最先端を走り続ける『KYOTO EXPERIMENT』の開催を、心からお祝い申し上げます。14 回目を迎える本年のキーワードは『まぜまぜ』。多様性、重層性に富んだ文化が息づく京都を舞台に、新進気鋭の表現者の方々が紡ぎ出す壮大な実験(EXPERIMENT)は、言葉や文化の違いを超えて、私たちの心を大いに揺さぶることでしょう。御来場のみなさまには、今ここでしか出会えない先鋭的な作品と新たな交流を、ぜひお楽しみください」と述べています。
共同ディレクターの川崎陽子、塚原悠也、ジュリエット・礼子・ナップは「KYOTO EXPERIMENT 2023 は、『まぜまぜ』をキーワードとして開催する。キーワードは、この言葉を鍵としてさまざまな問いへの扉を開いていけたら、というイメージで設定している。したがって、フェスティバルで紹介する全ての作品がこの言葉のもとにおさまるようなテーマではなく、プログラムへの多様な視点を得るための言葉と考えている。
『まぜまぜ』に行き着くまでの大きなヒントは、今年の Shows プログラムのうちいくつかに見出せる、『言語(身体言語を含む)』や『継承』、『アイデンティティ』といったアイデアである。これらの概念は、単一的な真正性が問えるものではなく、さまざまなものが混ざり合いながら存在しているのではないか、ということをディレクターチームで話し合った。翻って、いまの国内外の状況では、さまざまな分断が進み、白か黒か、という二項対立的な思考が顕著になっているようにも感じる。『まぜまぜ』は、そうした状況において、可変性や流動性、複数性を思考の軸のひとつとすることはできないかと考え、設定したキーワードである。アイデンティティや帰属について考えるとき、国籍・民族・言語がその出発点になることが多いのではないだろうか。『まぜまぜ』というキーワードを通してこれらの出発点を思考することで、現代社会をオルタナティブなやり方で捉える余地が生まれるかもしれない。
プログラムにおいては、第二言語としての言語、ダンスや身振りなどの身体言語、そしてそれらがどのように受け継がれていくのか、また、文化の純粋性という概念や、文化が伝達され、循環していく中でどのように変化していくのか、といった問いやトピックを扱う作品群を紹介する。より広い視点においては、文化的・社会的アイデンティティがどのように構築され・あるいは解体されるか、そこでどのような権力構造やヒエラルキーが作用しているかを考察できるかもしれない。
今回は、プログラムの構成や各作品について解説することよりも、私たち 3 人が『まぜまぜ』から考えたことをディレクターズ・メッセージとしたい。これをきっかけに、このフェスティバルに参加するみなさんも考えをまぜまぜしながら、Kansai Studies、Shows、Super Knowledge for the Future [SKF] からなるプログラムを楽しんでいただければ幸いである」と語っています。
ぜひ、KYOTO EXPERIMENT 2023の目撃者になって、新たな気づきや今まで持ち得なかった視点を獲得してみてはいかがでしょうか。
■KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2023
会期:2023年9月30日(土)‐10月22日(日)
会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO、京都市京セラ美術館 他