デザイナーの堀畑裕之氏と関口真希子氏が2005年にスタートさせたドメスティックブランド「matohu(まとふ)」。「日本の美意識が通底する新しい服の創造」をコンセプトに、日本の歴史や文化を探求し、独自のスタイルを追求しています。
そんなmatohuが2019年10月7日(月)、「藍の源流」をテーマにした2020年春夏コレクションを、matohu 表参道本店にてインスタレーション形式で発表しました。堀畑氏曰く「ショー形式でのコレクション発表が、今の時代にマッチしない」として、2019年春夏コレクションの「手のひらの旅」シリーズ第1章から、映像とモデルプレゼンテーションによってコレクションの発表を開始。今回、まず2階のアトリエで今季のテーマ「藍の源流」の映像作品を放映し、その後1階の店舗に移動して、モデル3ルック、マネキン10ルックの計13ルックを披露しました。
1ルック目のジャケットは、絞りではなく、藍で段染めしたもの。和紙を繊維にして織っており、不思議な光沢感があります。和紙は濃く染まるので、深い色合いを楽しむことができます。藍染は赤や黄色など、色々な色が染みこんでおり奥行きがあります。シャツはオーガニックコットンの藍染。パンツはしじら織りのストライプ。しじら織りとは、明治の初め頃に、ある女性が雨に濡れてシボができた布を見て、タテ糸の掛け方を工夫して発明した伝統工芸です。こちらは、シルクを横糸にしているので、光沢感と柔らかさがあり、しなやかです。コサージュもしじら織りで仕上げたもの。「ザ・徳島」といったルックです。
4色の藍染の糸をつなぎ合わせて紡いだグラデーションが美しい2ルック目。徳島県の吉野川がインスピレーション源となっており、さざ波をイメージしたそう。足元は、ラバーソールの軽やかなスニーカーを合わせています。
3ルック目は、matohuのシグニチャーラインである長着をろうけつ藍染したもの。和紙を繊維にして織られたもので、徳島県にある藍染工房「BUAISOU(ブアイソウ)」とのコラボ。光の軌跡が描かれています。イエローカラーが印象的なコーデュロイパンツは、複雑なカッティングが施されており、3Dに見えます。藍染に、あえてネオンカラーのイエローとメタリックなシルバーの靴を持ってくることで、より藍染の魅力を引き立ててくれます。コンテンポラリーかつフレッシュな印象のルックです。
その他、藍染の和紙を使ったニットなど、モダンで軽やかな印象のアイテムも。アクセサリーは、アルミを特殊な技術によって藍染したもので、紫色に染まっています。マットな光沢感が大人っぽい。
今回、今シーズンのキーとなる藍染の魅力を求めて、堀畑氏と関口氏は徳島県へ赴いたそう。江戸時代には、徳島がほとんどの藍染のシェアを持っていたんだとか。明治時代に来日した外国人たちが、日本人が皆藍染の着物ばかりを着ているのを見て、「ジャパンブルー」と呼びました。これほど身近で民族的に愛された色は他になかったと言います。ですが、150年が経過し、今では藍染の服を着ている人はほとんどいません。そこで、藍染を使った新しいクリエーションを、日本の染色文化が広がっていけるような物作りをしたいと考え、今回のコレクションが完成しました。
堀畑氏はこの夏、BUAISOUで染めてもらった藍染の洋服を愛用していたそう。「藍染の服を着ていると、心が落ち着き、浄化されるようでした。これが植物の命の力なんだと実感しました」と語っています。関口氏は、「すくもを作って染めている藍染に興味がありました。すべての藍の源流が徳島。手のひらの旅シリーズの第1章と第2章でテーマとした弘前は、徳島のすくもを使ってこぎんを作っています。すべて連結して繋がっているんです」と述べています。
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