国内外から90組以上のアーティストが参加する国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」が、2019年8月1日(木)に開幕しました。芸術監督であるジャーナリストの津田大介氏が、「雑誌の編集者のように、台割を作るような感覚で構成した」という今回の芸術祭は、「感情」「情報」「情け」といった「情」をテーマに掲げており、それを意識しながらアートを鑑賞すると楽しみが広がります。また、参加アーティストの数で男女平等を達成したことや、企画展「表現の不自由展・その後」が中止になるなど、何かと話題になっている芸術祭でもあります。
今回の芸術祭は、愛知芸術文化センターを一番のメイン会場に、名古屋市美術館、そして新たな会場として名古屋の四間道・円頓寺エリアや、豊田市美術館及び豊田駅周辺といった4つの会場を舞台に展開されます。その中でも必見のアートを、会場別にセレクトしてご紹介します。
■愛知芸術文化センター
メイン会場のひとつである愛知芸術文化センターでは、最も多くの作品を鑑賞することができます。中でも、人目をひき、大人はもちろん子供も楽しめるのが、ウーゴ・ロンディノーネ氏の作品《孤独のボキャブラリー》。会場には、まるで生きているかと錯覚してしまうピエロの彫刻が45体もあり、圧巻。色鮮やかな衣装をまとったピエロは、寝る、佇む、座る、考える、味わうなど、一日の中で人が行うポーズを取っています。ですが、顔にはお面を被っており、どのピエロも無表情。感情が読み取れないピエロの感情を、思わず読み取りたくなってしまいます。お子さんと一緒に、どんな表情をしているのか想像してみても楽しいですね。
社会変革を目指したパフォーマンスやインスタレーションを発表しているタニア・ブルゲラ氏の作品《10,150051》は、展示室に入る前に、手にスタンプが押されます。その数字は、難民の数を表しており日々数は変わり続けています。部屋には健康被害を出さない量のメントールが充満しており、目元に強い刺激を感じます。もしかしたら、涙がこぼれるかもしれません。これは、難民の問題に関する数字を見せられても感情を揺さぶられない人々を、無理やり泣かせる意図で設計されたそう。どこかエンタメの要素も感じさせるアイロニックな作品です。
■名古屋市美術館
地元出身の建築家・黒川紀章氏の代表作である名古屋市美術館でおすすめなのが、ジェンダー平等を掲げた今回の芸術祭を体現する、モニカ・メイヤーの作品《The Clothesline》。
「女性として差別されていると感じたことはありますか? それはどのようなものですか」など、4つの問いかけに対する様々な人々のコメントが展示されています。テーブルの上に置かれたカードの質問に、来場者も回答して、ロープに足していくことができる参加型インスタレーションです。
■四間道・円頓寺
江戸時代の面影を残す「四間道」と、昭和レトロな商店街「円頓寺」では、町の特性に合った展示が繰り広げられています。おすすめは、毒山凡太郎氏の《Synchronized Cherry Blossom》。
これは、今回のあいちトリエンナーレのための新作。1964年の東京オリンピック開会直後、世界初の高速鉄道・東海道新幹線の開業を機に、全国的に知られることになった名古屋名物の和菓子・ういろうを、花びら型に成型して、満開の桜を表現。桜に透過する光が美しく、いつまでも眺めていたくなる作品です。
■豊田市美術館・豊田市駅周辺
今回のトリエンナーレでは豊田市エリアも会場になっています。トヨタという世界的企業の本拠地があり、世界有数の工業都市として知られる豊田市。そんな豊田市で、テクノロジーと人間というテーマで展示しているのが、スタジオ・ドリフトの《Shylight》です。
機械やAIの影響をダイレクトに受けている豊田市で、花の就眠活動をテクノロジーに置き換えて表現しています。アムステルダムで発表した際、来場者は皆床に寝転んで観ていたそう。ぜひ、お子さんと一緒に寝転がって鑑賞してみては?
以上、各会場のおすすめ作品を5つピックアップしてご紹介しました。夏休みなので、「子供と一緒に、あいちトリエンナーレに足を運んでみようかな」という方も多いと思います。子供向けのラーニングプログラムも充実していて、段ボールで工作ができたり、木工や手芸を楽しめるなど、時間を忘れて楽しめます。
また、託児サービスもあるので、上手に活用してみては? ぜひ3年に1度のアートの祭典に足を運んでみてくださいね!
■あいちトリエンナーレ2019
情の時代 Taming Y/Our Passion
会 期:2019年8月1日(木)〜10月14日(月・祝)[75日間]
会 場:愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか(四間道・円頓寺)、豊田市(豊田市美術館及び豊田市駅周辺)
時 間:会場によって異なる
休 館:月曜日(ただし祝祭日を除く)、9月17日(名古屋市美術館のみ)
1DAYパス料金:一般 1600円/大学生 1200円/高校生 600円
フリーパス料金:一般 3000円/大学生 2300円/高校生 1100円