しっとりとした光沢をもち、手に口に、優しくなじむ漆の椀。
日本をはじめとしたアジアの山地では古くから、漆を掻き、塗り、日々の生活の中に活かしてきました。
ウルシ科の樹木は世界中に800種近くありますが、その中でいわゆる〈漆〉として樹液が使用できるのはほんの数種しかありません。
その数種すべてが、日本から韓国・中国・ベトナム・タイ・ミャンマー・ラオス・ブータンにかけて続く照葉樹林帯の山間部に生育しています。
ウルシの木に傷を付けると粘りのある樹液を流し、やがて黒く固まって傷を修復しようとします。
まるで人間でいう血液のような自然治癒のちからを、この地域の人々は天然の防水剤、接着剤として活用してきました。
食器や家具、住居、装身具など日常のものから、儀礼の道具や宗教建築にも使われます。
漆と人の歴史は、実に1万年以上前にさかのぼるといわれています。
世界各地の民族の装いや道具、所作を撮影・研究してきた井上耕一氏は、1980年代よりそうした〈漆文化圏〉とでもいうべき地帯に通い、写真におさめ、また漆器も収集してきました。
黒地に赤と黄の色漆を施す中国・涼山彝(イ)族の酒器、チベットやブータンのバター茶を入れる漆碗、黒く光るミャンマーの托鉢用漆器や漆塗りの絵解き経典…。
井上氏所蔵のバリエーション豊かな漆製品約100点を現地の写真や映像も交えて展示し、漆とともに生きる人々の暮らしを紹介します。
開催期間
-
上位美術館・ギャラリー
画像
アクセス数
0
1
1