重要文化財 「稚児大師像」(鎌倉時代、13世紀)(前期)
中之島香雪美術館開館記念展
「珠玉の村山コレクション~愛し、守り、伝えた~」
Ⅱ 美しき金に心をよせて
中之島香雪美術館の開館記念展「珠玉の村山コレクション~愛し、守り、伝えた~」は、朝日新聞社の創業者・村山龍平(1850~1933)が収集した美術品の中から、約300点を選りすぐり、1年間5期にわたって紹介しています。館所蔵品は重要文化財19点、重要美術品23点を数え、時代や作家を代表する名品も多くあります。これらの所蔵品に、村山家から寄託された美術品を加えた「村山コレクション」は、これまでまとまった形で紹介されたことはなく、今回が初めて全容を公開する機会となります。
オープンニングを飾った第Ⅰ期展「美術を愛して」(3月21日~4月22日)に続き、4月28日スタートの第Ⅱ期展「美しき金に心をよせて」では、村山が心をよせた日本美術の「美しき金」の世界を、祈りや憧憬、装飾への愛着を軸にたどります。華美とは対極にあった村山の人となりを体現するように、慎ましく清らかな輝きを発する世界を楽しんでいただきます。
みどころ
展覧会は、金で厳かにかざられた仏教美術から始まります。あどけなさが魅力の「稚児大師像」(重要文化財、鎌倉時代、13世紀)は、弘法大師空海の幼少の姿とされます。夢の中で仏と語り合ったという逸話を題材にしています。金色で縁取られた円相が童子を包み、幻想的な空間が作り出されています。
金色の光を放つ仏の体は、装飾性豊かな金で飾られました。「普賢菩薩十羅刹女像」(鎌倉時代、14世紀)、「阿弥陀三尊像」(鎌倉時代、14世紀)など、金を使うことによって仏の聖性が効果的に演出されています。
桃山時代には、城郭建築に相応しい豪華で装飾性の高い金碧障屏画が空間を飾りました。長谷川等伯「柳橋水車図屏風」(重要美術品 桃山~江戸時代、16~17世紀)は、金銀を多用した装飾性や、屏風を開くと金色の大きな橋が架かる趣向が喜ばれました。また、金色の橋や宇治の平等院からイメージされる仏教的な世界にも思いがつながります。
狩野元信・永徳「四季山水図屏風」(右隻:室町時代、16世紀 左隻:桃山時代、16世紀)では、金泥の霞が水墨の画面に奥行きを与え、控えめな四季の描写に金による光の効果が加わり、晴れがましい雅趣となっています。
最後に、工芸品にみられる金の装飾を紹介します。漆工の蒔絵技法はその代表であり、「牡丹唐草蒔絵香合」(鎌倉時代、14世紀)といった小品から、「浪草花蒔絵文台・料紙箱・硯箱」(明治29年)のような大きな作品までバリエーション豊かに、時代も幅広く取り上げます。陶磁器では野々村仁清作「色絵忍草文茶碗」(江戸時代、17世紀)を出品します。金彩のほどこされた、繊細な表現技法がみどころです。
※期間中、展示替えがあります。