遠藤竜

リトグラフ 石のまわりで

ARTLOGUE 編集部2018/05/22(火) - 06:07 に投稿
ラウル・デュフィ《電気の精》より 1953年

 

リトグラフは版面を彫ることなく描画を転写します。18世紀末リトグラフの発明によりそれまでの凹版や凸版に新しい版種、平版が加わりました。石版石を素材とするこの新しい印刷方法は、19世紀から20世紀にかけて瞬く間に普及し、その間に重量があり持ち運びが難しい石版の弱点を解消するジンク板やアルミニウム板が開発されました。描画の際の技術的な制約が少ないことから、様々なジャンルの作家がリトグラフに関心を持ち、優れた作品を残しています。

表現者の探究心と技術の進歩はより繊細で微妙な表現を可能にし、現代においてもリトグラフの人気は衰えることはありません。リトグラフの始まりである石版石の「石」の魅力も常に表現者の心をとらえ、現代の版芸術においても「石」による創造の世界は様々な広がりを見せています。

本展では印刷技術史における近代印刷術としてのリトグラフと多様な表現を生み出す美術表現としてのリトグラフを紹介します。石版印刷術の好事例や現代作家の優れた石版刷作品をお楽しみください。発明から200年以上を経たリトグラフの創り出す美しさとその魅力をあらためてお伝えしたいと思います。