「ゆるかわ」な作風で人気を博した琳派の絵師 中村芳中の展覧会「琳派展21 没後200年 中村芳中」が、京都にある細見美術館で開催!

遠藤 友香2019/10/30(水) - 11:04 に投稿
中村芳中『光琳画譜』より「仔犬」 享和2年(1802)刊 個人蔵

細見美術館恒例の「琳派展」第21弾は、2019年が没後200年の節目にあたることを記念して、中村芳中(ほうちゅう)(?~1819)を特集します。これまで2003年、2014年の琳派展にて芳中展を開催してきた細見美術館。3回目となる本展では、近年そのゆるい表現が「かわいい」と評される芳中の作品をたっぷり109点ご紹介。

「琳派展21 没後200年 中村芳中」展の様子
「琳派展21 没後200年 中村芳中」展の様子

中村芳中は江戸後期に京都で生まれ、大坂を中心に活躍した琳派の絵師として知られています。はじめは大坂の文人たちと親しく交わり、文人画風の山水画を描いたほか、指などの筆以外のもので絵を描く「指頭画(しとうが)」の名手として評判を博しました。また当時、自由な気風の画家として注目されていた尾形光琳に触発され、琳派が得意とした、絵の具や墨が乾く前に、濃度や色の違う絵の具を加えてわざと滲みやぼかしを作り出す「たらし込み」技法を多用した草花図を描き、「光琳風」の画家としても広く親しまれました。

中村芳中〈白梅小禽図屛風〉 細見美術館蔵
中村芳中〈白梅小禽図屛風〉 細見美術館蔵

 

中村芳中〈花卉図画帖〉より「七月 芥子」 細見美術館蔵
中村芳中〈花卉図画帖〉より「七月 芥子」 細見美術館蔵

 

中村芳中〈花卉図画帖〉より「十月 白菊」 細見美術館蔵
中村芳中〈花卉図画帖〉より「十月 白菊」 細見美術館蔵


一方、生涯にわたって俳諧を好み、俳人と交友を重ね、俳画や俳書の挿絵にも筆を振るっています。俳諧の持つ軽やかさと芳中の力みのない作風が調和し、「ゆるい」けれど味わい深い絵を残しました。

芳中の作風は、一言で言うと「おおらか」。太くて緩やかな線描、水分の多い墨や絵の具による彩色、単純化して大きく描いた動植物や人物。一つひとつ丸みのある絵を描き、モチーフを単純化・簡略化しました。芳中の手にかかると、どれも緩やかで「ほのぼの」とした絵になります。一見、素人が描いたようにも見える芳中画ですが、かわいらしく嫌味のない作品で大変人気を博しました。指頭画やたらし込みなど、興味を持った技法を試してみては描いていた本人が、一番絵を楽しんでいたのかもしれません。
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本展では、琳派風の草花を描いた屏風や扇面、人気の高い版本『光琳画譜』(享和2年刊)のほか、文人画風の山水画や指頭画、俳画や俳書の挿絵など、中村芳中の作品の数々をご紹介します。

中村芳中『光琳画譜』より「波に千鳥」 享和2年(1802)刊 個人蔵
中村芳中『光琳画譜』より「波に千鳥」 享和2年(1802)刊 個人蔵


また、今回の芳中展にあわせて、芳中画の魅力をレクチャーするイベントが12月7日(土)に京都市勧業館みやこめっせで開催されます。細見美術館の3階にある茶室「古香庵」では、芳中画として有名な「仔犬」をモチーフとした、虎屋製の焼き菓子をいただくことができます。ぜひ、細見美術館に足を運んで、ほのぼのと愛らしい「ゆるかわ」な芳中画の世界を堪能してみてくださいね。

物販には、豆皿やトートバッグなども。
物販には、豆皿やトートバッグなども。


■「琳派展21 没後200年 中村芳中」
会 期:2019年10月26日(土)~12月22日(日)
会 場:細見美術館(京都市左京区岡崎最勝寺町6-3)
時 間:10:00~18:00
*入館は30分前まで
休 館:月曜日
*11月4日(月・祝)は開館、翌日休館
料 金: 一般1400(1300)円、中高生・大学生1100(1000)円 小学生以下は無料
*かっこ内は20人以上の団体

関連イベント:第47回アートキューブレクチャー「ゆるい? かわいい? 芳中画の魅力」
日 時:12月7日(土)14:00~(約90分)
会 場:京都市勧業館みやこめっせ大会議室
申 込:先着100人
料 金:一般500円 友の会会員300円
問合せ:細見美術館 075(752)5555
 

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