6月4日は「虫の日」。漫画界の巨匠・手塚治虫(1928〜1989)らによって設立された「日本昆虫クラブ」が、虫が住める街づくりを願って提唱しました。昆虫を含む生き物たちは、時に自然界のアートといった美しい色彩や形をわたしたちに見せてくれます。タイの田舎暮らしで出会った、小さな生き物たちの写真を掲載します。
アクセサリーにしたい小さな黄金のカエル
常夏の国タイでは、1年を通してセミがワシワシと鳴き、雨が続くとカエルの大合唱が聞こえてきます。いろんな生き物たちの発する声は、時にはシンクロしながら、まるでシンセサイザーのサウンドのように周りに広がっていきます。小さな生き物たちは、家屋の中に侵入してきて、飼い猫の餌食になることもしばしば。うちの猫はゴキブリとカエル以外は何でもイケる口なので、これまでの犠牲者の総数は相当な数にのぼります。
猫ニモマケズ、コーヒーサーバーの上にぴょんと飛び乗ってきたのは、体長2cmほどの小さな黄金のカエル。人の気配に動じることもなく、ラップトップの上まで登ってきました。カエルの金色とMacBookのアルミニウムの筐体が絶妙にマッチして、ちょっと感動しました。
少しザラッとした表面仕上げのゴールドは、天然のアクセサリーのようです。メタルを加工して、ピアスやネックレスにしてほしい。ジュエリーデザイナーの方、どなたかコラボしませんか?
ビビッドな色をまとう虫たち
タイの鳥や昆虫は、とても色彩やデザインが派手。日本の奥ゆかしい色調の生き物とはずいぶん異なります。鮮やかなオレンジ、レッド、グリーンやコバルトブルーを身にまとう姿は、ファッショナブルでお洒落な感じです。虫が苦手な女性でも、おもわず写真に撮りたくなると思いますよ。
黄色と緑のブラジルっぽい配色のまるいお腹の蜘蛛は、手足を含めて3〜4cmくらいのミニサイズ。もしかして妊娠中でしょうか。
日本でもおなじみのカメムシ。タイ版は彩度の高いビビッドなグリーンです。
オレンジとブラウンがかったグレーの配色の蛾。素晴らしいテキスタイル・デザインです。人による表現をはるかに凌駕するような自然の造形を目にすると、人間の限界や生物の大切さに気づかされます。
生きている喜び。生き物たちのライフ
生き物たちの愛の営みを目撃してしまうこともよくあります。ほとんどのタイの家屋にいる「チンチョ」と呼ばれるベージュ色のヤモリ。夕方から夜にかけて、灯りに呼び寄せられた羽虫や蛾などを、忍者のようにすばやく近寄って捕食します。タイの虫たちにとっては一番怖い天敵でしょう。
プラスチックの洗面器にいたカエルのカップル。見つけたこちらも泡をふきました。
吾妻ひでお先生の本『カオスノート』から抜け出してきた(ような)カエル。猫・ペンギン・カエルという不思議な構図です。うちの猫はカエルには無関心。わたしと同じく、ウェットな触感が苦手みたいです。
蜂の巣はタイ人の大好物。フレッシュな蜂蜜は栄養分に富み、白子のような味の幼虫はタンパク質が豊富です。棒の先に火をつけて、煙で蜂を巣から追い出して地上に落とします。慣れてないと非常に危険です。
現金収入は少ないものの、自然と共存しながら「足るを知る」暮らしに満足していたタイも、グローバリズムとツーリズムの影響からすっかり様変わりしてしまいました。乱開発のなか生き延びている小さな生き物たちを見かけると、人間のエゴイズムについて考えてしまいます。そういえば、『ジャングル大帝』をはじめとする手塚漫画にも、こういったメッセージがよく登場しますね。ちなみに手塚治虫の誕生日は、11月3日「文化の日」です。