「世界のファッション-100年前の写真と衣装は語る-」のギャラリートーク
スピーカー
次六尚子
会場
会期
2014年7月19日~10月7日
展示について
「いまや世界のどこに行っても目にするのは、似たような装い、似たような生活スタイルだ。-100年ほど前の世界の服装は驚くほど豊かな多様性に満ちている。」 (『100年前の写真で見る 世界の民族衣装』日経ナショナルジオグラフィック社刊) 今から100年前、1910年代の世界は、科学とテクノロジーが飛躍的に発展した新時代の幕開けにより人びとの生活が変化し、新しいものを求め、それに呼応するかのようにファッション界も転換期を向かえていました。衣服最大の革命であるコルセットからの解放が現代衣服を生み出し、印刷・発行技術の発達はファッション雑誌の登場を牽引し、欧米のモード情報が勢いよく世界へと伝播していきます。都市における洋装化が進む一方で、地域の特色ある衣装をその土地の流行に合わせて作り、着こなす衣生活を続ける地域がまだ残っていました。 本展では、衣服におけるグローバル化が進む寸前に、いち早く誌面に写真を取り入れ始めたナショナルジオグラフィックによって幸運にも記録されていた人びとの多様な姿をとらえた貴重な写真100点と当館が所蔵する同時代の世界の衣装やファッション写真の奇跡的な出会いにより、地域ごとの特色を形成していた時代の空気、緻密な手仕事が際立つ装いのセンス、100年前の多様性に満ちたファッショナブルな世界をお楽しみいただきます。 ●展示内容と見どころ [ナショナル ジオグラフィックの世界を記録した写真とその網羅性] ナショナル ジオグラフィックは1888年に創刊以来、100年以上に渡り各地を取材し続け、世界180か国で発行するビジュアル誌。蓄積された膨大なアーカイブの中から1900年代~1930年代前半に撮影した雑誌未掲載のものを含むドキュメンタリー写真約100点を展示。一部を等身大サイズでご覧いただきます。 [現代だから見比べられる世界の同時代の衣装] トラファガン・スクール・オブ・ファッション(ニューヨーク、廃校)からの一括収集資料を中心に1890~1940年代の世界の衣装と同時代に欧米で名を馳せたデザイナーのドレスを展示。人や情報の移動に今よりも時間がかかった100年前、ファッションの流行も少しずつ、しかし確実に近隣の国・地域同士で影響しあい、似通っているようです。 [100年前、雑誌とともに拡張した写真] 20世紀初頭にナショナル ジオグラフィックがモノクロ写真を掲載し始め、後にカラー写真に移行、ファッション雑誌『ハーパース・バザー』(1867~)や『ヴォーグ』(1893~)が普及し始め、雑誌と写真が結びつきファッション写真が成立。ドキュメンタリー写真とファッション写真、またそれらが掲載された雑誌の実物で、拡張していく写真の世界をお楽しみください。
アーティストについて
ナショナル ジオグラフィック協会 National Geographic Society ナショナル ジオグラフィック協会は、米国ワシントンD.C.に本部を置く、世界有数の非営利の科学・教育団体です。1888年に「地理知識の普及と振興」をめざして設立されて以来、10000件以上の研究調査・探検プロジェクトを支援し、月刊誌「ナショナル ジオグラフィック」のほか、雑誌や書籍、地図、テレビ番組、インターネットなどを通じて世界中の人々に「地球」の姿をお伝えしています。月刊誌「ナショナルジオグラフィック」は世界40言語で発行されており、力強い写真と綿密な取材に基づく記事で、世界の森羅万象を紹介しています。
スピーカーについて
次六尚子(じろく・なおこ) 神戸ファッション美術館 学芸員 1982年大阪生まれ。龍谷大学国際文化学部卒業後、ロンドンのキングストン大学とデザインミュージアムが共同運営するキュレイティング・コンテンポラリー・デザイン修士課程修了。出版社、国立民族学博物館勤務を経て、2013年4月から現職。展覧会、服飾文化セミナーの企画・運営をとおし、誰もが毎日身につける衣服を媒体とした「ファッション」の面白さを伝える活動をする。