木村秀樹 Period 6 : Squeegeeing

ARTLOGUE 編集部2017/12/03(日) - 02:35 に投稿

木村秀樹-70年代の鮮烈なデビューから現在・未来に至る仕事。

現代版画を“超俯瞰”する計7回、4年間にわたるプロジェクト、

“Hideki Kimura: Project Periods 2015-2018”


20代の頃から国際的な版画展に出品し多くの賞を受賞、国際的にも高い評価を獲得。長年に渡り第一線で活躍を続けている日本を代表する画家/版画家、木村秀樹。特に70−80年代に制作された作品群は国内の主要美術館に収蔵されており、ご覧になられた方も多いと思います。

ギャラリーノマルで2015年より始まった、木村秀樹の70年代から現在に至る仕事を4年間計7回の会期(Period)で開催するプロジェクト、"Project Periods"。
このプロジェクトは、時代を越えてなお色褪せることのない魅力を放ち続ける70年代初期の作品から最新作までを系統立て俯瞰的にご覧いただくことで、木村の思索の遍歴をたどり、その魅力に迫る試みです。

毎回、版画の新たな可能性を提示する新作を発表 (今回9作目)!
今回のプロジェクトでは、木村がこれまでに制作してきた膨大な数の作品群の中から10のシリーズを選び、当時と同様ないしは類似のポジ/版を用いて、現在の視点から新たなシルクスクリーン作品を各ピリオドごとに制作。旧作と併せて展示します。10枚の新作版画作品は、全会期終了時(2018年2月)に1冊のポートフォリオとして出版いたします。

なお、今回のプロジェクトでは、木村を古くから知る京都市美術館学芸員、中谷至宏氏に4年間ナビゲートをご担当いただき、客観的な視点からも木村の仕事の本質を探ります。

"Period 6 : Squeegeeing"の見どころ
Project Periodsの6回目となる今展では、スクリーンプリント制作時に用いられるスキージー(インクを塗布するためのヘラ状の道具)で、キャンバスに直接半透明のインク膜を幾層も刷り重ねる技法「Squeegeeing」で制作した作品シリーズをご覧いただきます。
このシリーズは、木村の高度なテクニックに裏付けられた美しい仕上がりが見る人を魅了するだけでなく、半透明、両義性、ユニットの集積など、木村作品に通底するテーマが卓抜している、現在も続く重要な作品となっています。。

 

 作家コメント「スキージングー半透明ー皮膜ー両義性ースキン・ユニット」


1972年から現在に至る制作の展開を、7回の展覧会を通じて紹介します。私のこれまでの制作は、いくつかのシリーズの連続体/集合体と見なす事ができるかもしれません。"Periods" は、それ等のシリーズを、時系列に則して、合理的/回顧的に紹介する事を目指しますが、その事は逆に、各シリーズ間に、技法的、素材的、内容的、時間的な、浸潤、交錯、反復といった、分節化不可能性を再認識させる事になると想像しています。制作遍歴の中に、別の違和を発見し、新たな展開に繋げる事、これが "Periods" に託した木村の課題です。

第6回のピリオドは「スキージング」という括りで、1998年以降に制作した、主にキャンバスを支持体としたアクリル作品群の中から、約10点を選び、展示を試みます。

スキージングとは、シルクスクリーン版画の刷りに用いる道具ー squeegee に ing を付けた造語です。Squeegeeing は、Printing/反復性 と Painting/1回性 の中間/ neutral に位置する技法であると考えられます。スキージングの行為を、版を介さず、直接キャンバスの上で行う事によって、版画のような絵具の均質性を保ちつつ、同時に、絵画のような筆跡のニュアンスを併せ持った、独特の皮膜を造る事が出来ます。

スキージングによってキャンバス上に定着される半透明の皮膜は、スリガラスのようでもありレースのカーテンのようでもあり、水の流れのようでもあり、そしてユニット・タイルのようでもある不思議な多様体ー neutrality です。この多様体を基礎的資材として、平面上にどのようなイメージ構築が可能か?を多角的に探る事が「スキージング・シリーズ」の継続的課題です。 ポートフォリオ「Periods」に挿入されるシルクスクリーンの新作も併せて展示します。上記のような、キャンバス上で行った実験成果をふまえ、シルクスクリーン版画へのフィードバックを試みました。

木村秀樹 Hideki Kimura

 

 

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